2014年9月15日月曜日

遺伝子検査のベストプラクティス・ガイドラインの日本語版

ACMGのガイドラインについて、再度検索をかけたところ、日本語版でそれに近いものが2010年に検討されていたことが分かりました。

「稀少遺伝性疾患の分子遺伝学的検査を実施する際のベストプラクティス・ガイドライン」

PDFではなくマイクロソフトワード形式で提供されているので、気がつくのに時間がかかってしまいました。

ガイドラインですので、コピーしてもよいものと考え、ACMGの2005年のものと対比してみます。結論から言うと、よくできた日本語の対訳になっています。なぜ数字が異なっているのかはよく分かりません。参考文献の中に含まれているかどうか全部は見ていないのですが、見た範囲では含まれていないようです。もしかしたら、ACMGのこのガイドライン全文が、ACMGのサイトから消えて、natureのサイトだけに残されているのと関係があるのかもしれません。私の記憶が正しければ、2014年の春まではACMGのサイトからダウンロードできたはずです。そのリンクが切れたのでnatureのサイトを参照することにした記憶があります。

例1 翻訳領域の全エクソンのシーケンシングにより病的変異が検出されず、数カ所のヘテロ接合が検出された場合 
  • SAMPLE 1: Complete Gene Sequencing with Negative Results and Heterozygous Positions: 
検査名: XXX遺伝子のシーケンス解析
  • Test: Sequence analysis of the XXX gene
検査の理由: _______症候群の疑い
  • Indication for Testing: Suspected diagnosis of ________ syndrome
方法: 翻訳領域の18のエクソンと隣接するイントロンをPCR法により増幅し、両方向からシーケンスした。
  • Method: The 20 coding exons and the flanking intronic regions of the gene were amplified by PCR and sequenced in two directions. 
標準配列としてN M _xxxxxxxxを用いた。
  • The reference mRNA sequence is NM_xxxxxxxx,
第1コドンは開始コドンATGとしATGのAを第1塩基として付番した。
  • with codon 1 corresponding to the start ATG and nucleotide 1 corresponding to the A.
結果: (今回の検査では)X X X遺伝子の変異は同定されなかった。
  • Result: No XXX gene mutation was detected.
詳細: 数カ所においてヘテロ接合となっている部位を認めた。
  • Details: Several heterozygous positions were noted,
これらの部位では両方のアレルが存在していることが示唆された。
  • consistent with the detection of two normal alleles.
コドン223ではTATとTACが認められた。
  • At codon 255, both TAT and TAC were present.
これは既知の多型で、両方のコドンはチロシンをコードしており臨床的な意義は無いと考えられる。
  • This is a known polymorphism of no apparent clinical significance, since both sequences encode tyrosine.
コドン816ではCCA (プロリン、P )、CGA (アルギニン、R )が存在していた。
  • At codon 871, both CCA (proline, P) and CGA (arginine, R) were present. 
P816Rは疾患に無関係であると報告されている(A uthor et al, 2005)。
  • P871R is reported to be a nondisease associated normal variant (Author et al., 1999).
ほかにc.427-13(IV S 3-13)の位置にもヘテロ接合となっている部位を認めたが、病的意義はないと考えられた。 
  • Heterozygosity was also seen at a noncoding position, c.428-15 (IVS3-15), which has no apparent effect.
これらのヘテロの部位を認めたことから2つのアレルが存在しており、遺伝子全体の欠失が存在する可能性は否定された。

  • The presence of these heterozygous positions confirms that two alleles were present and excludes the possibility of a complete deletion of one allele.
 解釈: 本患者において_______症候群と関連する遺伝子変異は同定されなかった。 
  • Interpretation: No mutation associated with ______ syndrome was detected in the gene of this patient.
この結果は _____症候群の診断を否定するものではない。 
  • This result does not exclude the diagnosis of this syndrome. 
________遺伝子の変異は _________症候群の家族歴のある患者の 65%に認められ、家族歴のない患者の30%にのみ認められる(A uthor et al., 2000)。 
  • Mutations in _________ are found in 60% of patients with _______ syndrome and a positive family history, and in 35% of isolated cases (Author et al., 2000).
 上記の解釈は報告書作成時点での_______症候群に関する遺伝学的知見に基づくものである。 
  • The interpretation is based on the current understanding of the genetics of ________ syndrome.
Limitations: Only the coding regions of the XXX gene and immediate flanking intron sequences were examined.
  • 限界: 本検査では X X X遺伝子の翻訳領域とそのごく近傍の領域のみが解析された。 
プロモーター領域の異常・イントロンやその他の非翻訳領域に異常があったとしても今回の検査では検出されることはない。
  • Changes in the promoter region, farther into the introns, or in other noncoding regions of the gene, would not be detected.
DNAシーケンシングは検査を行った領域内の塩基置換、小さな欠失、小さな挿入を高い感度で検出することが出来るが、100%の感度ではない。
  • The sensitivity of DNA sequencing is over 99% for the detection of nucleotide base changes, small deletions, and insertions in the regions analyzed. 
XXX遺伝子以外の遺伝子に変異があったとしても検出されることはない。
  • Mutations in genes other than XXX would not be identified.
大きな欠失や挿入は今回の検査方法では検出されない場合が多い。
  • Multiple exon deletions, multiple exon insertions, and complete deletion of one allele may not be identified using these methods.
 (?)
  •  Other types of rare genetic variation can interfere with this analysis.
参考文献: 
  • References:

ACMGの2005年のガイドラインのリンクが切れたことで、おそらく改訂されたガイドラインがACMGのサイトのどこかにあるはずと考えて探したのですが、見つかりませんでした。しかし、それらしきウェブページは多数あったので、メモしておきます。

Ethical and Policy Issues in Genetic Testing and Screening of Children(2013)

ACMG recommendations for standards for interpretation of sequence variations(2000)

ACMG recommendations for standards for interpretation and reporting of sequence variations: Revisions 2007

ACMG Recommendations for Reporting of Incidental Findings in Clinical Exome and Genome Sequencing

American College of Medical Genetics and Genomics Practice Guidelines, ACTIVE LIST

ACMG, Laboratory Standards & Guidlines("2008 Edition"とあるので既に古いかもしれないので注意。しかし、2013年の文献も掲載されているのはよく分からない)


また、2005年版の超希少疾患と希少疾患の混同についての訂正が2006年に出されています。これもメモしておきます。

Erratum

Genetics in Medicine (2006) 8, 681–687; doi:10.1097/01.gim.0000245631.07117.ac

Erratum

Top of page
Abstract
In the article “Technical standards and guidelines: Molecular genetic testing for ultra-rare disorders” in the October 2005 issue of Genetics in Medicine, the definition of a rare disorder, rather than an ultra-rare disorder, was used in section URD 2.1 on page 572. The authors would like to clarify these definitions.

A rare disorder, as defined by the Orphan Drug Act of 1983, affects populations smaller than 200,000 individuals in the USA. An ultra-rare disorder, as defined by common usage, is a disease occurring in less than 2,000 individuals in the USA.

ACMGの日本語訳

ACMG(American College of Medical Genetics)という団体の日本語訳を付すために、グーグルでヒットカウント分析を行った。

"臨床遺伝学会" ACMG 180件
"医科遺伝学会" ACMG 2件
"医療遺伝学会" ACMG 1件

"遺伝子学会" ACMG 6件

"米国臨床遺伝学会" ACMG 61件
"アメリカ臨床遺伝学会" ACMG 17件


米国臨床遺伝学会とすることにしたい。

2014年9月8日月曜日

D-FAX

D-FAXについてのメモ

何年も前に利用していたD-FAXというファクス受信番号を得られるサービスが、再度必要になったため登録した。以前から利用中の送信サービスiFax、おそらく現在はBizFaxと呼ばれているものでは、受信に月額維持費用がかかるため。

少し020という点に不安を感じないことはないが、以前はこれで受信できていたので大丈夫と思う。新たにPDFオプションというのができていたが、とりあえず無料の範囲で使いはじめる。

考えてみれば予想外に電子メールだけでやりとりできる会社は増えなかった。結局ファクスで送ってファクス番号に返してくる出版社がある。その会社の中では実は受けたファクスを電子メールで担当者に飛ばしているのかもしれない。

2014年9月6日土曜日

進化のランダム性、遺伝病のランダム性

 Wikipediaの進化のページを読んでいるうちに、もしかしたら希少疾患について突然変異が「ランダム」という表現は適切でないかもしれないと思い、ドーキンスの「盲目の時計職人」を初めて読んでみました。とても厚い本なので、今まで読むのを避けてきてしまったようです。その結果、進化に寄与する突然変異は多くの意味においてランダムでないようですが、疾患として表れて子孫をほとんど残さない場合には、進化よりもランダムであると考えていいように思います。たぶん、とても重要なことなので、一部を引用します。転載許可は後で考えます。
私は突然変異がランダムでない点として三つ挙げた。突然変異はX線などによって誘発される。突然変異率は遺伝子によって異なっている。そして前進突然変異率は復帰突然変異率と等しいとは限らない。いまは、これに突然変異がランダムでない第四の点を付け加えたことになる。突然変異は、既存の胚発生過程に変更を加えることしかできないという意味でランダムではない。(493頁) 
おそらく、疾患との関係からもう1点追加することができます。生殖可能年齢となるまでの成長過程で疾患を患うような突然変異は、次の世代に引き継がれないので自然界で認識することはほぼできない。しかし、ヒトの場合だけは希少疾患として認識される。

 この著書についての重要な点として、累積淘汰という、ランダム性が少なくて系統的な進化の考え方を説明していました。ヒトの疾患のことは、ほとんど登場しませんでした。思うに、この手の「淘汰」について書かれた著書で疾患を論じると、患者は淘汰されるべき対象と誤解され、著者・患者ともどもに不幸な関係になりかねないためかと思います。確かに何十年前ならそうかもしれないですが、遺伝医療時代の入り口に差し掛かっているので、人として生を受け戸籍によって人権を与えたからには、行政により遺伝子治療で患者を救うための努力がなされるべきと思います。その努力が実るにはまだ時間がかかるでしょうが。

2014年8月12日火曜日

近年に2回行ったアミノ酸分画の結果

アミノ酸分画は先述の2002年の他に、2010年と2011年にもそれぞれ測定しました。






2014年8月11日月曜日

無症状のままミオトニー放電だけが検出された症例


 1990 Mar;47(3):268-72.

Myotonia fluctuans.


CASE I-1. - An 86-year-old woman was in good medical heath except for a memory discurbance. Other family members could not recall her compaining of any neuromuscular symptoms. She had no muscle wekness or myotonic signs. However, the EMG of the hypothenar muscles showed typical myotonic discharges.

2014年8月10日日曜日

usegalaxyを使ってFASTQからBAM,VCFへ

DNADTCから与えられたBAM中でイントロンの一部が読めていても、VCF中で意図的にカットされていることが分かったので、usegalaxyを使って自分でFASTQからBAM、VCFを生成しました。
https://usegalaxy.org/u/ksfk/h/illumina-exome

手順としては、以下のようになります。

FASTQC
FASTQ Groomer
Concaternate datasets ペアリードごとの2つのバッチのFASTQファイルを結合
hg19のリファレンスシーケンスのファイルを自分で用意してusegalaxyにロード
Map with BWA for Illumina
SAM-to-BAM
rmdup 重複したリードの削除
Add or Replace Groups BAMファイル中にグループの指定がないと次の処理を通らないため。
Realigner Target Creator
Indel Realigner
Add or Replace Groups グループとしてIlluminaが指定されてないと次の処理を通らないため。
Count Covariates
Analyze Covariates
Table Recalibration
Unified Genotyper VCF生成
Variant Filtration
ANNOVAR Annotate VCF

かろうじてそれらしいBAMとVCFが生成できたものの、全体的に行き当たりばったりで正確さに自信がありません。特に2回のバッチに別れたFASTQを1つにまとめるのはConcaternate datasetsとして早い段階実行するしか方法がないようで、しかしそうすると、バッチの間でのシーケンサのパラメータ(phred?)の違いを考慮に入れずに後の処理を行っていることになります。

下手をするとIndel Realignerなどで架空の変異を生じてしまっていないかとても心配です。このような理由で、現在のところ、DNADTCから提供された方のBAMとVCFを信頼して作業をしています。