2015年5月28日木曜日

SAPHO症候群

脊椎関節炎に近い疾患だが、骨と皮膚の両方で炎症をおこす。
http://fhugim.com/?p=2158

脊椎関節炎よりも罹患率が低く、治療法は確立されていない。

脊椎関節炎と同様に、生物学的製剤が有効な場合があり、そうなるととてもお金がかかる。
生物学的製剤
NSAIDs、ステロイド、抗リウマチ薬で治療効果の見られなかった患者さんに対し、生物学的製剤の中でTNF阻害剤(イフリキシマブ(レミケード®)、エタネルセプト(エンブレル®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)等)が用いられることがあります。
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000735.html

症候群と呼ばれているように、症状が軽い人と重い人の差が激しい。

もしも慢性再発性多発性骨髄炎と同じとみなされると、指定難病だが、違うとみなされると、指定難病とならない可能性が・・・。(■生活保護を受けてない限り、医療費的に重要なので要確認かも■)
掌蹠膿疱症などの皮膚症状を合併する事も多く、サホー(SAPHO)症候群も同一或いは類似した疾患と考えられています。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/3236

2015年5月26日火曜日

患者性善説の終焉

 患者性善説とどこか別の場所で呼ばれているのかどうか、私は知らないが、私がこう呼んでいるのは日本の小学校、中学校の教育の中で、特に障害者のことを性善的に受け止めましょうという流れのことである。確かに、小中学校でいっしょになる障害者の中には、長く患っているうちに過渡期を経て善性を帯びてくる方々もおられるのだろうが、全ての患者がそうではない。特に病気を患って自分が惨めで不幸な立場にいると感じている時期には、むしろ性悪説と言ってもいいような精神的状況を誰でも一度は経験するものなのである。

 私の場合も、O大学病院のT助教の元で、L教授との間に挟まれながら、陽性どころか完全な陰性しかでない針筋電図とCMAP筋電図を受けていたとき、T助教に対し疑心暗鬼になってとんでもないことをしてしまうところだった。L教授から届いたSCN4Aに変異があったので、先天性パラミオトニーと遺伝的に診断する、という結果シートに対して、T助教が何を根拠にしているのかL教授に尋ねて下さいと言われた。その一方で、氷に浸したら部分的にでも陽性になるのではないかということで、条件を変えながら筋電図検査を受けるために130キロメートル先のO大学病院まで何度も通院しなければならない立場に陥った。当時の私は、新たに発見された変異の病因性を検証実験によって明らかにするか、筋電図検査で陽性になるか、どちらかでないと、変異が見つかっただけでは確定診断されない、という現実を、ようやく理解し始めていた。

 つらい通院の間に、幼少の頃具合が悪かったが、当時は寛解していた私の息子も遺伝子検査をO大学病院で受け、同じ変異があることを確認した。その後、T助教にO大学病院では検証実験はできない、と伝えられたのだが、私はT助教の書かれた論文で検証実験で病因性を検証したことが書かれていたので、O大学病院では無理でも、T助教の関係している他の大学で検証実験はできるものと誤解していた。

 冷却しても筋電図検査は完全に陰性のままで、通院の帰りに朦朧として電車を間違えたりと、いよいよ切羽詰まって、米国の患者会に約10万円の寄付をして、どうしてもL教授からSCN4Aの病因性の根拠を示してもらわないと、T助教は他の大学に検証実験を依頼するかもしれないんだ、と、L教授に私の質問への返信を督促してくれるように電子メールでお願いした。疑心暗鬼になっていた私はT助教が何かを隠していると思っていたし、それはおそらく他の大学に検証実験を依頼するルートがあるということだと考えていた。しかし、それは大きな間違いだったのである。

 次の診察の際に、T助教にもその旨伝えると、それは違うと、むっとしながら否定された。T助教が話して下さったのは、他の大学に依頼するルートがあるのではなく、もっとも最近にO大学病院で検証実験を行った患者でも最初に来院してから7年間かかるほど検証実験のペースが遅く、O大学病院では1年で一人しか検証実験できないということだった。また、後に気付いたことだが、当時、T助教は厚生労働省の難治性疾患事業の中では他の教授らの名前が下に連なる元締めの立場であり、2000万円近い研究費をT助教が、担当する疾患の範囲で割り振りしていた。T助教から、予算的により恵まれない他の大学に先天性パラミオトニーの検証実験を依頼しても受け入れられるはずがなかったのである。

 あれは私の誤解だったと、患者会の幹部に慌てて電子メールで訂正と言い訳をして、以前はT助教に加筆していただいた文章を私のメールアドレスから送っていたものを、T助教から直接にL教授に送ってみることになった。すると、L教授からすぐにはっきりとした返信が来た。筋電図陰性で、息子が健康ならば、検証実験をやったとしても陽性と出る可能性は"very very low"なので、私は検証実験を行うつもりはない、そう述べられたのだった。

 最終的にL教授とT助教の間で連絡をつなげることができたので、両者にとっては良かったのだろうが、私自身としては残念な結果となった。仕方なく、T助教が周期性四肢麻痺と先天性パラミオトニーの予算の元締めであるという状況に、少しほとぼりが冷めてから、他の大学で検証実験を行なってもらわなければならなくなった。dbSNP登録に関する変異の発見者の学術的優先度を調べた際に、私はT助教に非常に申し訳ない誤解をしていたことを知った。変異を発見したというのは、たとえ検証実験を行なわなくとも、学術的に絶対の所有権を意味する。他の誰かが発見した変異というのは、絶対に勝手に検証実験を行なって発表してはいけないものなのだ。・・・たとえ、発見者が検証実験を行うつもりがなくとも。

 私は、このルール自体が患者のためでなく研究者の利益のためのルールで、実情に則していないとも思った。そこで、発見者が検証実験について責任を持つべきだともL教授にほのめかしたのだが、L教授の態度は変わらなかった。

 ともかく、T助教は他の大学に他人が発見した変異の検証実験を依頼するような人間では決してなかったのである。研究者としては一流の人物であることは確かである。・・・医師として見た場合に言いたいことがあるが。

 一つには、T助教が2000万円という研究費を、検証実験をしないなら一体何に割り振っているのだろうかという点が気になった。当時、この研究費は先天性パラミオトニーや周期性四肢麻痺だけでなく、筋緊張性ジストロフィという私が調べたことがない疾患についても対象としていたため、この疾患について調べることになった。

 多くは親が子を作った後、発症する。しかしその時には子には優性遺伝で五十パーセントの確率で病気が遺伝している。しかも、子の方が親よりも重度で発症するのだ。親は子が発症するのを、自らの発症から二、三十年経て衰弱し、死んでいくまで眺めている。しばしば、子が親より早く亡くなるそうだ。筋緊張性ジストロフィという病には、優性遺伝の先天性パラミオトニーと同様に筋緊張の症状を伴うものの、「表現促進」と呼ばれる一クラス上の悲劇が追加される。近代医学に基づく重症度というのは個体が全てで、親子として見た深刻さが重要なことは理解されていない。

 これほど重度と言われる筋緊張性ジストロフィという病気が予算を分けられているのでなければ、私はなお強くT助教に検証実験を行うよう主張したかもしれない。しかし、患者の立場で親がどんな顔をして子の発症を見るのか想像してみると、とてもそんなことを主張し続けられるわけはなかった。

 この一連のエピソードは、患者としての性善と性悪の両方を表していると思う。自分が不幸だと思っているうちは、どうしても医師に対して攻撃的になる。医師のものを含んだような言い方に疑心暗鬼となり、医師を性悪的に誤解する。隠し事というのは伝搬するもので、医師が隠し事をすれば患者の方も隠し事をするし、その逆もありうるものなのだろう。その一方で、自分よりも遥かに重度の患者のことを知り、彼らの心中を想像して何も言えなくなる。

 「ドクターハウス」というアメリカドラマがあるが、患者を手段を選ばす診断しようとする変人かつ天才的な医師の話である。このドラマでは、基本的に患者は嘘をつく存在として描かれる。日本のドラマでの患者は、モンスターペイシャントを例外にして、ドクターショッピングの程度までは性善説に基いて描かれるのとは対照的である。いろんな意味でショックの連続で、日本語字幕版を全シーズン見てしまった。エクソームシーケンシングの結果を公表しようと思ったのも、症状をネット上で公開して診断を募るという、同ドラマ中のある患者のエピソードに感化されたためかもしれない。

 ドクターハウスでは極端な患者の例ばかりを集めたわけで、患者性悪説に傾き過ぎているが、日本の小中学校では患者性善説ばかりを教え過ぎている。あまりにも偏っているので、人間として患者も攻撃的にもなれば、それを過ぎて安定することもあると理解するまで、人によっては大人になるまでかかることもある。私自身がそう理解するまでに時間がかかった。

 この節のタイトル「患者性善説の終焉」というのは、多少大袈裟かも知れないが、誤解しないでいただきたいのは、患者が善ではなくなったと主張するつもりはない。あくまで本質として善、つまり性善である患者はいないという意味である。本質として善である患者もいなければ、本質として悪である患者もおらず、善であれ悪であれ医療者との相互作用で揺れ動くものだが、なるべくなら善へと傾きたいものだと思う。

生命科学データベース統合

 DDBJへのエクソームシーケンシングデータの登録について問い合わせていたところ、バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)という組織が倫理審査を担っていて、その基準に合致していないので、現状のままでは登録できないとの回答を得た。基準に合致した方法で全ゲノムシーケンシングを受ける可能性について引き続き問い合わせているが、いずれにしても組織がどういう構成になっているか、また、本著で既出の様々なデータベースが今後どうやって統合されていくか、まとまった形で調べる必要が生じたので、本節をもうけた。

 本著で既出のデータベースを列挙する。

疾患データベース OMIM、Orphanet、KEGG、GeneReviewsJapan(GRJ)
論文データベース PubMed、PMC、CiNii
mtDNAのSNPデータベース MITOMAP、GiiB-JST mtSNP
SNPデータベース dbSNP、JSNP
配列データベース DDBJ
患者レジストリ Remudy、SWAN USA、配列データベースと未診断患者レジストリの統合システム

疾患データベースとしては、Wikipedia日本語版を最も頻繁に参照していて、次にWikipedia英語版を探し、それらにない希少疾患のときだけ、上記の疾患データベースを参照している。そのため、Wikipedia日本語版を最もあてにしているとも言えるが、Wikipedia日本語版に疾患がなかったり、記述が不足している場合が多い。それにも関わらず、本著を記しながらWikipedia日本語版の説明で足りない部分をWikipedia上に書き加えるということは、本著の主張に引きずられるため、できない。非常に不便な状況である。実際上、どのぐらい公的にWikipediaが書き加えられているか調べてみる。

 Wikipediaは、基本的には、「自分自身の記事をつくらない」ガイドラインと呼ばれるものが設けられていて、自分の利害がかかっていると様々な編集がだめである。どうも規約にさえShare-Alikeが宣言されているため、将来少しでも有償の書籍とする意図があれば迂闊に引用できないので、ここでも具体的な記述を示すことができない。なるべくノートでの編集の提案をして、それで誰も編集してくれなければ、ノートで合意を得てから編集する必要があるとのこと。しかし、疾患の患者が利害関係者かどうかは明記されておらず、おそらく、利害関係者ではないということになるだろう。例えば糖尿病について、糖尿病の患者が本を読んで調べたことを現在も書き込んでいるはずだし、先進国では潜在的に糖尿病を患っていない人口の方が少ないはずだから。そもそも、患者がどうかという個人情報は、他人に証明のしようがないため、患者は自分の疾患について書き込んでもいいはずである。ただし、中立的な観点から、根拠を含んで、独自研究を含まずに書く必要がある。

 また、意外なことに、自分が支払われている状況を明記さえすれば、有償で寄稿することも許されている。大学教授やGLAMが、基本給で雇われているだけで、直接的な手当なしで寄稿する際には、開示する必要さえない。しかし、予算の獲得とかに利害が絡むと、やはり「自分自身の記事をつくらない」ガイドラインに抵触するはずだし、その場合は公的予算の申請と執行は公表されるはずなので、たいていの場合、後で調べれば利害の絡む編集だったと誰かが気がつくと思われる。ただ、そもそも大学教授は予算の申請分野と研究内容は被っているものなので、判定は非常に難しいだろう。これが、大学関係からの書き込みが避けられて、研究者はいるはずなのにWikipedia日本語版の記述が足りない理由なのだろう。

 結論としては、Wikipediaを疾患データベースとして使い続けることはできるが、有償でWikipedian in Residenceを日本のGLAMの機関が雇うということがない限り、疾患数としては増えないと思われる。これまで同様、書き足さずに参照できる範囲で参照するしかない。

 疾患データベースとしてWikipedia日本語版と並んで日本語により提供されているのは、KEGGであり、[最も希少な希少疾患...]で述べた疾患が含まれている*疾患データベースという側面はパスウェイ中心のタンパク質ゲノムデータベースの延長線上で提供しているということのようだ。実際、脂肪酸代謝異常症については詳細が分類されずGA2とGA1が一つのエントリーになっている。OMIMへのリンクが張られているからいいようなものの、この分類はいくらなんでもおかしくないだろうか? と思って「文献」のところを読んで理解した。最初に登場した文献に依存する分類方法なのだろう。確かにGA2とGA1が一つの文献の中で同時に述べられている。この方法だと、Wikiにように多人数に頼らずとも、苦しいだろうが少人数でも維持可能と思われる。おそらく、Wikipediaで肉付けされた疾患解説からリンクが張られて、パスウェイ重視の読者だけがリンクを辿るという形で、Wikipediaと相補的に機能するのに適している。今後のためにパスウェイ重視の疾患一覧へのリンクを示しておく。どこの代謝障害かという科学的な根拠で分類されているため、疾患が発見された歴史的経緯や罹患率による記述が排除されて、非常に分かりやすい。2007年4月より文部科学省統合データベースプロジェクトの支援を受けたそうなので、文科省管轄である。

 これに対して、厚労省側の疾患データベースとして、難病情報センターを調べたが、こちらは「病気の解説(130疾患)」とあるので、130疾患をこえて説明を増やすつもりがないようだ*

 1省の範囲を超えた、大もとのデータベース統合については、「生命科学系データベースの統合化の方針や成果を紹介する合同ポータルサイト「integbio.jp」(インテグバイオ)」として、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省によるものが運用されている**。ここから辿ると、厚労省による疾患データベースは、GeMDBJ 疾患ゲノムデータベ-スなのではないかと思えたが、これはJSNPのデータをコモンディジーズの研究用に提供するフロントエンドなのではないだろうか? 希少疾患については、どこに厚労省直轄のデータベースがあるのか分からない。

 その代わりに、NCNPによる希少疾患の患者レジストリRemudyへと辿れた。希少疾患データベースは文科省管轄のものをなるべく使って、厚労省管轄は患者レジストリという形で、既に被ることなく分野分けができているのかもしれない。

 日本語による疾患データベースの最後として、GRJを挙げるが、これはおそらく草の根的にデータベース統合事業とは別に運用されている。「サイトの趣旨とご利用上の注意点について」を読むと他からリンクを張られるのに神経質なようなので、ここでもリンクを示さない。しかし、GRJに書かれている内容は秀逸である。基本的には臨床遺伝専門医と遺伝カウンセラー向けである。しかし、それでも、こんな優秀なデータベースほど何とかリンクを張っていいように統合して欲しい。注意書きだけのためにURLが読めないようにフレーム化されていると思われ、どの疾患を読んだか印を付けるために毎回ページ中の適当な文字列をグーグルで検索してフレームを外してから読んでいるので、結局は毎回開こうとする度にウェブ上の全画面広告*のようにした方が、注意書きの効果も向上すると思われる。インターネット検索全盛の時代にフレーム化による注意書きの表示はあまり意味がない。しかし、全画面注意書きの方式にすると医療従事者の方々も毎回注意書きを読むことになるので、便宜性との兼ね合いの上に現在の方式となったのだろう。しかし、これでは統合の考え方とは正反対で、時代に逆行しすぎである。おそらく、もっともよいのはac.jpドメインとor.jpドメイン、umin.jpドメイン、その他医療従事者のドメインを除外して、全画面注意書きを表示して、患者が一般的な情報を得たいようならWikipediaか難病情報センターへのリンクを押すよう判断させることである。手間はかかるが、この部分だけでいいので、データベース統合事業からIT系の人出を借りて行うわけにはいかないのだろうか。結局は、遺伝病をクローズドにしなければならない種類の疾患なのだと世間に印象付けて偏見を煽り、また、臨床遺伝専門医と遺伝カウンセラーへの世間の好感度を下げているように思われる。

 文科省管内でのデータベース統合について、全体的な組織構成として、DDBJ、DBCLS、NBDCの3者の関係を調べる。2014年11月現在である。

DDBJ、日本DNAデータバンク、人的規模43名
国立遺伝学研究所、人的規模102人
ROIS、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構、人的規模413人

ROIS、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構

JST、独立行政法人科学技術振興機構人的規模1500人

DDBJ、DBCLS、NBDCの取り合いとしては、DBCLSがNBDCとDDBJの間に入る形のようだ。インターフェースとしてのデータ・フォーマットをセマンティックウェブのRDFを中心にして決めているようだ。

(『よくある質問』 DBCLS、2014年11月18日閲覧 より)

DBCLSは平成26年度からはNBDCとの「統合データベースにおける基盤技術開発とデータベース運用に係る共同研究」のもと、データベースの統合化と使いやすさの向上のための開発・運用を行っています(平成23年度〜平成25年度はNBDC「ライフサイエンスデータベース統合推進事業」の基盤技術開発プログラムを受託という形でした)。
DBCLSを実際に中心となって技術開発や運用を行うということで「銀行」にたとえるとするなら、NBDCは事業主体として戦略立案や他の機関を統括する「ホールディングス」の役割を担っている、というところでしょうか。

はっきり言うと、現在の段階では、NBDCが、DBCLSの予算上の上位組織であると思われる。実はお世話になったこともあるライフサイエンスQA統合TVもDBCLSによる運営だった。[エクソームシーケンシング...]の節の脂肪酸代謝異常症の年表の中でシーケンサーの図をTogo Picture Galleryから拾っていた。DBCLS Galaxyもここだった。

 現在、文科省の統合データベースプロジェクトが平成22年で終了*し、それに合わせてDBCLSによる統合データベースプロジェクトのウェブサイト内からNBDCなどへとサービスを移行しているようだ。

 ようやくNBDCとDDBJの間でのシーケンシングデータ登録に至ったが、審査は全てNBDCで行われることになっている。シーケンシングデータの保管はDDBJとなっている。混乱の原因が自分でも分かってきたが、DDBJに登録申請する段階では、NBDCがそれほど大事な役割を担っているとは思っていなかったが、次世代シーケンシングデータアーカイブであるDRAのマニュアルの長いページの真ん中のところに、NBDCが審査すると記されている*。そして、NBDCおよび共同発表の説明だとDRAがNBDCヒトデータベースの一部になっている。DDBJの記すDRAと、NBDCの記すNBDCヒトデータベースの中のDRAは、おそらくは同じものを指している。DRAというフォーマットやサーバソフトウェアが共通の別のデータベースが、DDBJ用とNBDC用の2つあるわけではない。最終的にどうなっていくかというと、おそらく混乱するユーザが出る度にDDBJからの説明は減って、NBDCに全部の手順の説明が統合される。あるいはその逆かもしれない。

 最終的に、[検証実験用の山...]で述べた「配列データベースと未診断患者レジストリの統合システム」は、いつ頃に実現可能かというと、だいぶ道のりは遠そうだ。結局14年間*、生命科学データベース統合政策を続けても、dbSNPに近いものを作るとか、dbSNPが3極で統合されている形にするとか、そういう形にはならず、希少疾患の診断に有利な部分は全てdbSNPに依存して、代わりに厚労省のデータベースでは、コモンディジーズ医薬開発用のSNP公開に特化してしまっている。dbSNPが日本で実現するのは10~20年先とみて、むしろ、米国NCBIの配列データベースSRAで私のような患者をどのように処理しているか調べる方が先決と思われる。配列データベースは3極で共有しているため、基本構造が同じはずなので、DDBJのDRAとSRAを比較すると違いが分かりやすいはずだ。

 実際に試してみると、登録自体はできたが、問題が複数あった。

・4つのファイルのうち、2バッチで、2つが反対方向のペアリードの構成になっていると思っていたのだが、登録の際にそれをどう指定していいか分からない。これまでファイル名で指定していた部分が、ファイル名をSRAの表記で統一されるので、コメントか何かで記すしかないのだろうか。また、ダウンロードした拡張子SRAのファイルは、FASTQ形式なのだろうか? GZIPで圧縮した形式でアップロードしたものは、展開されたのだろうか?
Paired-end data submitted in FASTQ format should be submitted in one of two formats: (1) As separate files for forward and reverse reads, in which the reads are in the same order.

All SRA data can be converted to FASTQ format using ‘fastq-dump’. Since SRA data are stored in a concatenated form, it is important to note that specific options may have to be invoked in order for paired-end fastq to be formatted correctly during output. It is recommended that new users review fastq-dump documentation to ensure proper output formatting before committing to large dataset extractions
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK242622/?report=reader
・リード長を入力する欄があり、最も安価なシーケンシング構成のはずなので、HiSeq2500の高速モードでの最大長の250としたが、本当に250かどうかFASTQを直接読めば分かるのだろうか?
・FASTQをアップロードして公開するとファイルサイズが小さくなっている。公開されるとFTP先のファイルは削除されるので確認できず、もう一度FTPでアップロードして、アップロード直後の大きさを確認する必要がある。
・ダウンロードして確認しようとした際に、Asperaを用いたダウンロードをどう指定していいか分からず、FTPの選択肢しかないように見える。当然ながら、時間がかかる。
・削除の操作をフォームで行うことができず、直接メールして手動で削除してもらうしかないようだ。度々は依頼できないので、今後は、1ファイルをアップロードするごとにファイルサイズの変化を確認して慎重になる必要がある。modificationはフォームから操作できるようだが、Runの削除まではできないようだ。新しいRunを追加してから、古いRunが古いものであることをコメントで残すしかない。
The modifications can be made using the online submission tool that was used to create the records. If you wish to delete or move a record, please contact us at vog.hin.mln.ibcn@ars. Only the center or individual that created the record can change it. 
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK47539/
・StrategyとしてWXSとしたのに、なぜかWhole Genome Sequencingと表示されている。この点もコメントに書かないといけないようだ。
・結局次の文言が表示されてプライバシーコンサーンがないことを、2回確認されるだけで登録できたが、本当にそれでいいのだろうか。もちろん、本人が登録しているのだから、プライバシーコンサーンがないのは当たり前なのだが、DDBJと比べて理由を尋ねられなかったのが今になって逆に気になる。今回の場合はシーケンシングを行ったのも米国内でしかも日本国内で検体の採取を行ったという記録も存在しないので、それを米国のデータベースに登録するにあたって、日本の法律や規制はより一層関係ないと主張できるが、BGIでシーケンシングを行っていたら、まさか中国の規制が関係してくるのだろうか?
Only use for human samples or cell lines that have no privacy concerns. For all studies involving human subjects, it is the submitter's responsibility to ensure that the information supplied protects participant privacy in accordance with all applicable laws, regulations and institutional policies. Make sure to remove any direct personal identifiers from your submission. If there are patient privacy concerns regarding making data fully public, please submit samples and data to NCBI's dbGaP database. dbGaP has controlled access mechanisms and is an appropriate resource for hosting sensitive patient data.

2015年5月20日水曜日

アミノ酸分画の再検討

 本節は執筆中の闘病記UNdiagnosedの中から移動したもので、ほぼ研究者のみを想定した節である。

 S大学小児科のY教授の診察を受けた際に、私が持ち込んだ3回分のアミノ酸分画の結果シートについても指摘いただいていた。先述の2002年の他に、2010年と2011年にそれぞれ測定したものを示す*。教授から、アミノ酸分画が基準値を外れるのはよくあることなので、複数回の測定の中で系統的に出る基準値外れだけが病因性と言える、この3回分の中には、系統的な基準値外れはない、という指摘だった。
 もう一度系統的に外れた項目がないかどうかを確認したところ、アスパラギン酸とグルタミン酸が該当していた。

2002 アスパラギン酸5.2(<3.3) グルタミン酸103.8(22.8~45.4)
2010 アスパラギン酸2.6(<2.4) グルタミン酸68.7(12.6~62.5)
2011 アスパラギン酸8.7(<2.4) グルタミン酸92.3(12.6~62.5)

 これに着目してもう一度エクソームシーケンシングの結果を検討したところ、グルタミン酸受容体であるGRM8の変異が浮かび上がってきた。しかし、GRM8によるタンパクは中枢神経系で働くのに対し、グルタミン酸は基本的には血液脳関門を透過しないとのこと。しかし詳しい学術論文をあさると、GRM8の受容体で取り込み阻害が起こった結果、細胞外のグルタミン酸濃度が上昇した場合、中枢神経系でのグルタミン酸濃度を一定に維持するために、その上昇分は血液脳関門による能動輸送を経て循環系へと流れ込むということはありうるのではないだろうか? ただ、そうなるとアミノ酸分画によるグルタミン酸の上昇はあくまで中枢神経系のみに関係していて、筋肉痛と易疲労性、タンデムマス検査陽性とは関係がないように思える。

 グルタミン酸の上昇の二次的影響としてアスパラギン酸がこれほど上昇することがありうるのか、それともアスパラギン酸の上昇は別の原因と思われるかが、鍵のような気がする。

 現在他にも該当する変異がないか作業中です。ART5という遺伝子の変異も気になります。

ヒトの遺伝子を持ったまま48となった人たち

 
 示した図は、U.S. Department of Energy Human Genome Project(米国エネルギー省のヒトゲノムプロジェクト)によりパブリックドメインとして提供されている英語版が分かりやすかったために、日本語化すべく再構成したものである。この図はダウン症候群の症候群としての各疾患の内訳をとらえる上でおそらく役に立つと思われる。図中で、ダウン症候群そのものが「クリティカル領域」という付記されて含まれているが、これはダウン症候群クリティカル領域1(DSCR1)と呼ばれる遺伝子のことを意味していると思われ、ダウン症候群でがんが抑制されている原因と考えられている。しかし、その他の疾患としては、QT延長、アルツハイマー病、白血病の遺伝子が21番染色体に載っていることで、これらの症状がダウン症候群の患児で進行してしまうという状態になってしまっている。

 図中左上に記されているAPPは家族性アルツハイマー病(FAD)に関係していると知られる遺伝子で、FADではAPPの病的変異が優性遺伝する。トリソミーでは、単純にタンパク質を作り過ぎて制御が行き届かなるような状態ではないかと思われる。片親性ダイソミー§という、ゲノム刷り込みの影響で、染色体構成は正常なのに疾患を引き起こす疾患も存在するので、メチル化といった複雑な制御がうまくいかずに、症状を引き起こすのかもしれない。詳しいことはまだよく分からないので、現時点では大きくとらないでいただきたいが、症状とご両親の遺伝情報から各染色体のメチル化の影響を調べて、最も症状を緩和しそうな1本に目をつけて、その染色体を壊せたなら症状は改善するであろうと思われる。

 おそらくは、重症度の低い優先遺伝的な発症パターンを多くの遺伝子で起こし、同時発症するために、1遺伝子当たりの重症度は低くとも、全体としては相当に重症度が高いと言えると思う。私の場合、2つの遺伝病の軽度のタイプの同時罹患を疑っているが、ダウン症候群の場合には遺伝病の軽度のタイプに10以上罹患しているのと似た状態ということになる。知能に影響してしまうので今までご本人たちの言葉として聞くのは難しかったと思われるが、健常者で言うとフルマラソンを走り切るといった激しい運動の後の朦朧とした意識障害が永遠に続いているのに近い状態と表現できると思われ、一見愛らしい外見により我々はそこまで認識することが難しいが、これは内的、精神的には大きな苦しみに耐え続けている状態と思われる。

 私の方がはるかに軽度であったが同じ患児であった立場から言うと、このようにアルツハイマー病に近い状態で
は、ピアノやダンスといったお稽古事であまり厳しくない方がよいのではないだろうか。強制されてやっている場合もあれば、本人がご両親を大事に思ってその意向に報いようとして心臓といった臓器の具合が悪いまま無理をするということも頻繁に起こっていると思われる。

 患児というのは総じて、自分の気持ちを言葉で表現することが難しいと考えられるため、それを補うためのスキルの方がもしかすると有益かもしれない。

"絵画" "ダウン症" 約 113,000 件
"英会話" "ダウン症" 約 106,000 件
"絵手紙" "ダウン症" 約 88,700 件
"書道" "ダウン症" 約 61,500 件
"手話" "ダウン症" 約 48,700 件
"マカトン" "ダウン症" 約 4,450 件

"ダンス" "ダウン症" 約 433,000 件
"体操" "ダウン症" 約 354,000 件
"ピアノ" "ダウン症" 約 215,000 件

個人的には絵手紙といった比較的短時間で1作品を完了できる、美的センスを独特さを問われる作業の方が得意な患児が多いように思われる。

 21番染色体が増えた者同士で結婚すれば、基本的には4分の1の確率で48本の子供が生まれると推測できる。しかし、二重にダウン症候群を患うことになるかもしれないので胎児として重度の可能性がある。ダウン症候群の患者が結婚すると、生まれてくる子がダウン症候群である確率は67%かそれ以下と主張している記述があるが、元になっている文献を示していないので、こういった数値が出てくる根拠は専門の医師に尋ねないと分かりそうにない。(2014年11月17日追記、分かりました。とりあえずメモします。 "For a person with Down syndrome, the risk of transmitting the disease to the descendants is 1/3.")

 ただ、二重にダウン症候群を患って重度になるのではなく、逆に健常者のように安定な存在になるのではないかという可能性も、情報が全くないため否定できない。実は、ダウン症候群の患者の二人が結婚して、生まれた子供が見た目健常者に見えるので、46本の健常者が生まれたのだと思い込んでいる子供が、実は48本の染色体を持っている可能性もゼロではないのではないかと思う。

 48本に増えた新人類が登場するという考えは、調べた限り最初に口にしたのは、Wikipedia英語版の記述を信頼する限りは、心理学者のカール・ユングのようである。「集合的無意識」や「夢分析」で特に有名で、フロイトの影響をうけて分析心理学を打ち立てたこの偉大な心理学者が、46+2本というアイデアをどういう文脈で述べたのかは調べてもよく分からなかった。しかし、Wikipedia英語版の"Forty Six & 2"のページによると、この"Forty Six & 2"が意味するのは、「トゥール」(Tool)という米国のロックバンドの歌で、染色体の数が2本増えるという新しい人類の可能性を歌ったもののようだ。同ページの説明によると、カール・ユングが最初に思いつき、その後ドランヴァロ・メルキゼデク*(Drunvalo Melchizedek)というニューエイジムーブメントの思想家が広めたアイデアであり、人体が46本の染色体に加えてもう2本を持つようになり、現在の混沌とした世界から逃れて、進化の階段を昇るという可能性について言及したものとのことである。

 カール・ユングがどの文献でなんと言及したのか、具体的に調べるにはユングが母国語として数多くの著作を残したドイツ語で検索をかける必要があるかもしれない。ユングが当時ダウン症の染色体数が47本であることをどう考えていて、それが彼の新人類のアイデアにどう影響したのか、英語による検索では見つけることはできなかった。メルキゼデクの方は、聖書に登場するメルキゼデク*と同じ名前を使っているように、どちらかというと科学よりも宗教に近いのではないかと思われ、ユングがどう言及していたのかの方が重要と思われる。ジェローム・レジューンが21番染色体のトリソミーを発見したのが1959年ユングが亡くなられたのが1961年なので、たった2年間だがユングが知っていて46+2本で新人類説を説いていた可能性は、わずかと考えられるが存在する。メルキゼデクの言及については原文が残っている。最小限を引用して意訳を付す。

("Leading Edge Interview with Drunvalo Melchizedek" Leading Edge Research, Interview Conducted on December 22, 1995, 2014年11月7日閲覧 より)

We are a disharmonic level of consciousness that is used as a steppingstone from the 42+2 level to the next level, 46+2.
私達は42+2本のレベルから次のレベルである46+2本へと駆け上がるための手段として用いることができる、意識の混沌としたレベルにいる。
We are dangerous to both ourselves and nature, but we are necessary, and this can be seen within the various geometries.
私達は私達自身と自然の両方にとって危険な存在だが、私達は必要とされている存在で、これは様々なジオメトリーの中に見ることができる。
(略)
You'll go through a mutation, both internally and externally, where your chromosomes change from 44+2 to 46+2.
染色体が44+2本から46+2本と変化した際には、我々は精神と姿形の両方で大きな変化を経験することになる。
You gain two more chromosomes.
2本も多くの染色体が得られるのだ。
The other 44 are exactly the same as humans now.
他の44本は現在の人類と全く同じなんだ。
These two additional chromosomes change everything.
これら2本増えた染色体が全てを変革するのだ。

"The other 44 are exactly the same as humans now."はもしかすると"The other 44+2"のタイポかもしれない。いずれにしろ、この思想家が、染色体が2本増えた新人類という考えを英語で何度も言及して世界的に広めたようだ。

 21番染色体を2本というわけではないが、性染色体の異数性により48本の染色体を持つことになってしまった患児が、学術論文として報告されてきた。Wikipedia英語版の異数性のページに記載のタイプとして、"Non-autosomal"として、性染色体が合計で4本になる疾患がそうである。全部で3疾患が記載されている。
21番染色体の場合に参考になりそうなのは、XXXXの場合に非常に軽症の患者がいることかもしれない。Y染色体が含まれると、重症度が上がってしまうようだ。

 ダウン症候群の患者による出生率としても、やはり女性の方が3割から5割で妊娠可能で、男性は男性不妊に近いが、必ず男性不妊というわけではなく、父親になった例が3件、母親になった例が26件報告され、ダウン症候群の子のおよそ半数がダウン症候群を患うと述べられている。

 21番染色体+性染色体で48本となった患児も過去に存在しており、XXX+21のインドの患児、XYY+21のイギリスの患児、XYY+21のアメリカの患児、XXY+21のスイスの患児の報告がある。全て独立に両方の染色体が増えてしまったとされているようである。少なくとも、2つの増えた染色体の間に強い関連性はあるとは、読んだ限りでは分からなかった。いずれにしても、これらの患児の症状は重度と思え、おそらくは早くに天に召されたようだ。自分よりも子が重症化する恐れがあるかどうかは、遺伝性疾患の患者が親になる場合には大きな課題であり、私の場合には後から気づくことばかりで反省すべき点が多かった。ダウン症候群の患者の間でも気になる方はいるはずで、何らかの文献が見つけられるとよいのだが。

 これまでに48本となった患者の人数としては、十分に学術報告としてカウントできる数だが、なぜか21番染色体を2本の例は報告されていない。これは、見た目が健常者に近いなどの特別な理由で気が付かれていないのだろうか? それとも本当にいないのだろうか?


染色体が1対増える過程 - あくまで推測

 ダウン症候群では染色体が1本増える。生物の歴史の中で数えてみると、ヒトであっても23対しか染色体がないので、1本の染色体しか持っていなかったバクテリアから数えると、2倍体となった最初の1回と、その後1対ごとの22回で、単純計算の範囲では合計23回しか起こって来なかったことになる。もっとも、23対よりも多い染色体を持っている哺乳類もチンパンジー、ヒツジ、ウシ、モルモット、ウマ、イヌと多いが、チンパンジー以外は、系統樹の上で年代を入れて見たとしたら、霊長類と分かれた後に、おそらくゲノム重複といった、染色体の数が極端に増えるような現象に出会ったのだろうと思われる。

 ゲノム重複の点からチンパンジーとそれ以外の哺乳類を別に考えてもいいという考えを分化した年代を調べることによって検証する。図の哺乳類の系統樹の中で、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌのどれもローラシア獣上目に含まれ、ヒトを含む真主齧上目とおよそ9000万年前に分化した。モルモットはグリレス大目で、ヒトを含む真主獣大目と、これもおよそ9000万年前に分化した。ここまでは分化の後9000万年の長きのうちには、ゲノム重複といった稀な現象に出会うチャンスもあったと考えられるので、染色体の数がヒトより多くてもそれほど不思議はない。

 問題のチンパンジーについては、チンパンジー亜族はヒト亜族とおよそ500万年前に分化したチンパンジーとヒトの共通祖先で12番染色体に13番染色体が逆位で融合してヒトの2番染色体となったそうなので、遺伝情報を失ったわけではない。逆に3遺伝子分ぐらい増えていると述べられている。しかも、増えた分の遺伝子は9番染色体など他の染色体でも見つかっているそうなので、ウイルスか何かによる遺伝子の挿入が融合のきっかけだったのかもしれない。遺伝子の挿入についてはよく分からないが、染色体異常の種類としては、テロメア同士の融合と呼ぶようだ。この融合はあるウェブページでは"Little genic loss is associated with this kind of fusion but they are thought to be quite harmful"「こういった種類の融合は、遺伝子がほとんど失われないにも関わらず、非常に有害と考えられる」と述べられているが、ヒトでみられた例もある。最後のリンクから本文を読もうとすると悲しいことに料金が表示されたので、オープンアクセスの範囲で追えるのはここぐらいまでのようだ。

 ヒトとチンパンジーの共通祖先様からヒトに進化する際に、2本の染色体を1本にまとめる融合が起こったというのは、同時にそれぞれ父母由来の1対分である2本の染色体で全く同じ融合が起こったと考えるのは無理がある。それよりも、融合を起こして47本の染色体を持つ個体が、48本の正常個体と交配に成功し、子の半分が47本の個体、もう半分が48本の個体となり、近親婚によって47本の個体同士が交配することにより、四分の一の確率で46本となった最初の人類のご先祖様が誕生したものと推測できる。近親婚というのは危険な考え方かもしれないが、集団の個体数が少なくなってしまって相手が選べなくなると、動物ではどうしても自然と起こるのが知られている。

 この減少を特別な場合として除けば、その直前の染色体数の変化というのは、46本から48本への増加である。話を単純化したいので、染色体1本当たりの長さに限界があるため、単純により多くの遺伝情報を保存するために、染色体の数を増やすことが有利に働くと考える。増えたときに、何が起こったかを考えてみると、ヒトのダウン症候群の場合を元にすると、もっともありうるのは卵子か精子を減数分裂で作るときに、染色体不分離により47本の個体ができ、46本の正常個体と交配に成功し、子の半分が47本の個体、もう半分が46本の個体となり、近親婚によって47本の個体同士が交配することにより、四分の一の確率で48本となった共通祖先が誕生したものと推測される。この場合は、重複した染色体は、元の2本の染色体の全くのコピーなので、遺伝子重複的に、あるいは2R仮説的に、元は大して役にたっていなかったものが、後に続く分子進化を経て、言ってみれば空き容量としてうまく使われるようになったのではないだろうか。

 このように2段階で染色体増加を達成した可能性の他に、一段階でテトラソミーによる染色体増加を達成した可能性も考えられる。しかし、48から46へのテロメア同士の融合が全く対称な結果として、我々人類に伝わっている。少なくとも、この融合はテトラソミーのような形では極めて起こりにくいはずで、やはり2段階で起こったのではないかと考えられる。46から48への増加の過程の可能性の大きさとしては、テトラソミーによる一段階よりも、トリソミーと近親婚による2段階の方が、尤もらしいと考えられる。3段階以上の場合ももしかするとあるかもしれないが、複雑になればなるほど、おそらく生存可能性も低下すると思われ、そこそこシンプルでかつ2倍体生物として対称な結果が残される可能性を考えると、トリソミー経由の2段階が最も可能性が高いはずである。

 こう考えると、おそらく強く言えると思うのは、やはりダウン症候群の主な原因とされている染色体不分離という現象が全くなければ、染色体の数は増えずに我々は人類ではなくバクテリアの様な姿のまま現在に至るのではないだろうか。染色体不分離は一見偶発的に起こる事故にしか見えないが、22回は起こってもらわなくては人類は誕生しなったように思える。進化論における変異の発生と同様に、ヒトの一生という短い期間で見ると偶然にしか見えないが、進化史の中では意図して仕組まれたかのような現象と言ってよいのではないかと思う。さらには、染色体不分離の結果、トリソミーとして生まれた個体が、もとの種から見てある程度魅力的でないと、親にも育ててもらえないし、配偶者を得て交配することもできない。トリソミーとなって、多少弱い個体であっても、その弱さを補うくらい魅力的な外見をしていなければ、配偶者を持つことができずに人類とチンパンジーの共通祖先様とはならなかっただろうということである。

 更には、47本となった弱い個体を、近親婚が起こるぐらい複数、集団内に抱えることになったはずなので、弱い個体を守るという行動をとった集団でなければ、染色体1対を得て進化の次のステージへ踏み出すことができなかった可能性が高いと思われる。親が子を守るという愛は動物で多く見られるが、染色体1対を得る瞬間に、自分の子でなくても集団の弱い個体を守るという「他人への愛」が試され、その基準を満たした集団から我々の共通祖先様が生まれたのではないだろうか。我々が「人間性」と呼んでいるものの原型が、大きな進化へと結びついた瞬間だったのかもしれない。

 なるべくヒトに近い外見でしか想像することができないため、この推測が44本から46本への進化やそれ以前にも通用するとは思えない。あくまで、我々の祖先が経験した最後の染色体数の拡張の場合だけを考える。

 この考え方には課題がある。もっとも気になるのは、47本となった共通祖先様が、ダウン症候群と似た様相だったかどうか、あまり確かではないことである。何らかの方法で共通祖先様がダウン症候群と似ていたことを見出さなければ成り立たない。他の染色体が増える疾患の患児について調べると、あまりにも過酷な現実があって、ほぼ1歳を待たずに天に召されているので、ダウン症候群がもっとも近いだろうとは思われるが、今のところ、その共通祖先様がどのぐらいヒトやチンパンジーの姿形だったのか、調べても、よくわからないままである。

 共通祖先様で増えたのが、21番染色体に相当するものであったにせよ、何か他の染色体であったにせよ、単純計算だと、約23000個の遺伝子が23対の染色体に載っているので、染色体1対あたり1000遺伝子分なので、染色体1本がまるまる増える現象は1000遺伝子分の大進化に相当することになる。これが普通に1個ずつ変異を積み上げる累積的な進化とはスケールが違うのは明らかなので、この現象に出会ってしまった我々のご先祖様達にとっては、47本の染色体となった最初の一人にとって生死に関わる大変な負担だっただけでなく、48本となってからも何十何百何千世代も経て安定期に入るまで弱い個体が多かったはずである。たまたま運良く生き延びたという考え方をするよりは、強い個体が弱い個体を助ける集団だけが必然的に生き延びたと考えた方が合理的と思われる。

 チンパンジーを最初に見た時、顔が皺だらけで「おじいちゃんみたいだ」と思ったことはないだろうか。ゴリラなら体も大きくて父親っぽい感じだ。全体的に類人猿というのは、現代人よりも体毛が多く、皺だらけで、年長の男性ぽい様相をしている。その印象はおそらく逆で、我々の祖先の方が、染色体が増えるなどの大進化の際に、子供ぽくて女性ぽい外見をしていたため、その前の、言ってみればまるで父親のような種から保護を受けやすかったのだろうと思われる。逆に保護が受けられなかった者は我々の祖先にはなりえなかったのではないだろうか。いわば「愛されることも一つの強さ」と言える。比喩とか文学ではなくて科学的、生物学的な意味において。

 以上の考察は、決してダウン症候群の方々が子をもうけ、48本の染色体を持つ新しい人類の歴史を開始することがいいと言っているわけではない。ダウン症候群も多くの単一遺伝子疾患と同様に、地球上で生を謳歌している人類が、進化して現在に至るまでに必要だった犠牲なのではないか、そう考えるとダウン症候群に対する社会的サポートはもっと厚くてもいいのではないか、と考えられる。こういう進化と疾患を関係させるような考え方が間違っているなら、どこかに否定するための学術文献があると思われるが、探した範囲では見つけられず、しかし、肯定している学術文献も見つけられなかった。ということは、もしかすると、この分野の研究者のいくらかが思いついても、決して患者の前で気軽に口に出せるような説ではないために、患者会の反応も心配して、自分から言い出すと物議をかもすと思って口を閉ざしているのではないかと思われる。しかし、他の誰かが言い出したなら、多少研究してくださる研究者がおられるかもしれない。


ダウン症候群による大進化?-18、13トリソミーとの関係

 私が一部の産婦人科医の方々が遺伝性疾患の患者の合意なきまま、遺伝性疾患をターゲットにした新型出生前診断(NIPT)を導入し、着床前診断(PGD)を規制している、そしてこれからNIPTはもっと対象疾患の範囲が拡大するだろうと感じているように、ダウン症候群の方々も同じように頭越しに何かが議論されていくことに、違和感を感じているだろうと想像しました。
“Nothing about us without us"(私たち抜きに私たちのことを決めないで*)というスローガンもあるように、直接的に、ダウン症候群の方々に読んでもらえる文章にしようと思いたち、この節のみですます調で記することとしました。ですます調で記したところで、ダウン症候群の方々が読まないだろうと考えるのはおそらく思い込みで、症候群なので重症度の幅があるため、読んでくれる人口が存在すると思います。非常に具体的に言うと、岩本綾さんを想定しました。

 18、13トリソミーの患児達の姿を前の節で示したので、特に成人の寿命が伸びつつあるという特徴をとらえて、ダウン症候群の方々の写真を挿入します。全部ヨーロッパ人になっているのは、啓蒙のためにパブリックドメインとしてダウン症の写真を提供してくださっているdownsyndromepictures.orgにアジア人の写真が見つからなかったためです。女性の写真と男性の写真がありますが、それぞれ同じ人物ではありません。たまたま患児、成人、女性、男性の写真を均等にしようとしたところ、こうなりました。

 NIPTが現在日本で対象としているダウン症候群について、なぜ愛らしい様相に恵まれるのか、私なりの仮説があります。実は、他の病気なら中絶するが、ダウン症候群に厳密に限ってなら産んでもいいかもという意見は多いのです。普通、そういう事態は遺伝病ではありえません。

 女性たちは彼らのことをかわいいと言います。天使だという人もいるそうです。他の疾患の患児の方々には大変失礼なのですが、普通、疾患を持った子供は健児より多少は様相において苦しいものです。他の疾患の患児の総数の方がダウン症候群の総数よりも多いと思うので、少数派を貶めているわけではないのでご容赦ください。ともかく、たまたまダウン症候群だけが、魅力的な外見に生まれてくるために、いくら可愛くても環境的存在でもある子供本人のために産んじゃ駄目だとか、何か特殊な議論が巻き上がる、そんな偶然があるのでしょうか? 私はそれは偶然ではないのではないかと思います。

 ダウン症候群では染色体が1本増えます。染色体が1本増えるというのは、生物の歴史の中で数えてみると、ヒトであっても23対しか染色体がないので、1本の染色体しか持っていなかったバクテリアから数えると、2倍体となった最初の1回と、その後1対ごとの22回で、合計23回しか起こって来なかったことになります。例外も多いのですが、あくまで基本的には、染色体が増えることは進化しているということを意味します。その最後の23回目の時に、我々は一度はダウン症候群のようなお父さんとお母さんを通って、その子どもとしてヒトに近い形になったのではないかと想像します。あくまで仮説ですが、そう仮定すると、ダウン症候群を患った時のいろいろな特徴が説明できます。

 次の[染色体が1対増える過程...]の節で図を示して説明するので、ここでは大きくかいつまみます。

 そのお父さん、お母さんが生まれた、ヒトのずっと前の種だった両親から見て、ある程度魅力的でないと、育ててもらえないし、配偶者を得て結婚することもできないでしょう。多少弱くても、その弱さを補うくらい魅力的な外見をしていなければ、配偶者を持つことができずにヒトの先祖とはならなかったのではないでしょうか。

 ダウン症候群は、他のほとんどの病気が寝たきりになるのに対して、不思議なぐらい元気になります。この特徴は普通の病気としてはありえないことで、そういう病気がたまたま、偶然、存在して、かなり多数の患者がいるというのは、とても不自然で、ひょっとすると、ずっと昔にそうなる必要性があったから、現在でもまだ、それが続いているのではないかと考えた方が、納得がいく面があると思います。

 つまり、単なる病気というよりも、染色体の進化の中継ぎをするための、多少体の弱い人々で、心臓などの合併症があるため治療は必要だけど、原始時代には普通すぎて必ずしも完全には病気とは呼べず、はるか昔には健常者との区別がなくて、ただやたら元気だけど早くに心臓病で天に召される人たちということだったのではないでしょうか。

 ただ、それでも、やはり私は、ダウン症候群の方々の中に、新型出生前診断(NIPT)の普及に反対をしている方々がおられるのは納得がいかないのです。[変異のスピード調節 - 最も強く訴えたいこと]の節でも触れましたが、私が共感を覚える柳澤桂子さんの『認められぬ病』の中の言葉をもう一度繰り返します*

 すんでしまったことはどうでもよい。ひとつの症例として、私に起こったことが、あとからくる人の治療に少しでも生かされればと願った。
 人間にわかることはかぎられている。それを超えてしまったときには、どうすることもできない。医学の限界を超えたところでは、自分でその苦しみを受け入れるしかない。人間であることの苦しみを苦しみぬかなければならない。

 自分の子供に遺伝病をうつしてしまわないようにできる努力はしなければならないと思うし、ましてや意図的に自分の子を遺伝病の状態するという暗い欲望は断ち切らなければならないと思います。そういう欲望の一部は本能から来ているもので、ヒトは動物として自分の同類集団が大きいことを望むようにできています。例え子にとって不都合な疾患であっても、自分が味わっている疾患だったら遺伝させていいのではないか、何しろ親なんだから、漠然とそういう考えに流されがちですが、やはり子が自分が死んだ後何十年も生きていかなくてはならないことを考えると、子という別の個体に疾患の危害が及ぶことは、できる限りの努力で阻止しなければなりません。

 他人が患ってしまう場合にも同じことが言えると思います。我々は漠然と同類集団が大きくなって自分たちの勢力が増した方がいいのではないかと思っている、本能に裏打ちされた心理があります。それに打ち勝って、理性的に思考し、他人を自分の不幸に呼び寄せるのを避けなければ、私達は進化していないことになってしまいます。

 NIPTで予防しようとしているのは、ダウン症候群ばかりでなく、18トリソミーと13トリソミーの、ほぼ1歳を待たずに天に召される患児も含んでいます。あまりにも早くに亡くなってお墓に入るので、ダウン症候群のようにNIPTに抗議をする生きた人口として存在することさえないのです。過酷な言い方かもしれませんが、ダウン症候群でNIPTに反対した結果、日本の10万人の妊婦がNIPTが受けられる地域に住んでいるのに、5%の妊婦がNIPTを受けるのをやめて、5千人の出生にたいして、およそ5千人に一人の発生率で18トリソミーを生じれば、ダウン症候群がNIPTに反対したために、毎年1人が、病院から出ることもなく、外を歩くことも、何か一つでも食べ物を食べることさえなく、生命を落とす計算になります。少し単純化しすぎかもしれませんが、統計をとればもっと正確な数値が出ます。果たして、18トリソミーと13トリソミーで天に召される患児の方々が、何の罪を犯してこんな酷い目に合わなければいけないのでしょうか。その理不尽を誰よりもご存知なのは、ダウン症候群の方々なのではありませんか?

 補足ですが、18トリソミーも13トリソミーもダウン症候群と同じように、症候群付きで、エドワーズ症候群*、パトー症候群と呼ばれていて、個人差はとても大きいです。13という数の少ない方が平均した症状として重いことを思い出すために、なるべく症候群の名前よりも数字で呼んでいます。症状の個人差が大きいために、すぐに思い出せなくなって、とても覚えにくいです。

 確かに、胎児を殺す中絶というのはいけないことですが、あかちゃんの形で殺すのはもっといけないことです。本当は胎児になる前に、もっと何も苦しみを感じないうちから、胚の段階で着床前診断を行う技術も世界では実行されているのですが、日本ではダウン症候群の患者会を含む諸団体からの抗議などがあるようで、実施範囲が広がらず、世界との格差がどんどん大きくなってきています。お金持ちだけが、海外で男女産み分けという理由のために、着床前診断を受けるのが当たり前になってきているのです。その一方で、日本の遺伝性疾患の患者は非常に重い症状でなければ着床前診断を受けられず、健康な子孫を残すことは事実上禁止されます。着床前診断を受けられれば健康な子孫が残せる遺伝性疾患の中にはダウン症候群も含まれています。ただ、男女差と個人差があります。他の遺伝性疾患の特徴と同じで男子の方が症状が重いです

 私達が患うことの苦しみを知っているからこそ、新しく生まれる生命が苦しむのを減らしたい、それが人間性というもので、進化したことの証明なのではないのでしょうか?

 ある意味、NIPTに全面的に反対することは、さらに少数の弱者に対して、10倍返ししているのに近いのです。なぜなら18トリソミーも13トリソミーも、流産を乗り越えて生まれたうちの大多数が、ダウン症候群の平均寿命の10分の1の期間も生きられないのですから。

 しかしながら、たとえNIPTに理解を示したとしても、大して社会の方が患者達に報いてくれないのも事実なのです。

 NIPTでダウン症候群の患児がとても少なくなる分、いずれダウン症患者全体の助成金額に余裕ができるはずなので、その余裕がどこかでうやむやになっていくのではなく、5割以上ぐらいNIPT対象疾患の患者への助成を厚くするために回すような仕組みが作れれば、既存の患者にとっても新しい生命にとっても理想的なのでしょうが、どこかにそういう政策を研究している医療経済学者さんはおられないでしょうか? 社会にとっても遺伝性疾患の患者にとっても、なるべくフェアな基準とは、どの辺りにあるのか、おそらく何らかの目安をどなたかが学術文献として持っていたりするのではないでしょうか。私が5割以上ぐらいと書いてみても、それは単なる思いつきで、大した根拠はありません。そういう根拠の無い話が通るはずもなく、かといって、他国の例も見つけられません。

 もしかしたらNIPTが将来的に遺伝病全体を含むであろうことに、一時的に猛反対した方が、そういう学者さんを見つけやすくなるように思います。18トリソミーと13トリソミーを巻き込む意図がなく、ダウン症候群についてのみ主張することを表明した上であれば、一時的にはかなり強く主張をしても問題はないはずです。最終的に妊婦が決めるという形は取っていても、学歴優秀で知識のある医師や遺伝カウンセラーから伝えられる検査結果の説明を一般人は鵜呑みにするしかないわけですから、実質的にNIPTが「次世代の国民の間引き」を決めています。だからNIPTの対象疾患として、遺伝性疾患のどこまでを含めるのか「国民投票」をして決めよう、そういう運動をしないといけないの・・・かもしれません。まだ私もあれこれ迷いながら情報収集していますが。

自閉症スペクトラム

https://www.genome.gov/dmd/img.cfm?node=Photos/Graphics&id=96066

自閉症スペクトラムを説明するのに、実に印象的な図案を見つけた。NHGRIからである。脳のパズルのうちの、左下の1ピースだけが抜け落ちている。また、ピース同士の繋ぎ目の間に、黒い隙間ができている。その隙間は大小あって、脳の全体にわたって存在しているが、特に隙間が大きなところが見受けられる。結局のところ、ピースの大きな抜け落ちがある場合が明らかな自閉症であるが、そうでなくても隙間は誰にでもあるということを表しているのだろう。

一般的に理系の人間はアスペルガー傾向が高いことが知られ、ヨーロッパの一部の企業ではアスペルガーの人間を意図的に集めて緻密なバグ探しか何かに役立てているそうだ。自分がどこまでアスペルガー傾向が高いのかは、検査を受けてみるつもりだけど、どこまで高いからどうと言われても、家族の理解とジョブコーチを探す以外の対処がないのが現状でもある。筋痛疲労症状と合わせて重症化するので、筋痛疲労症状を抑えることがたぶん、大事なのだろうと思う。

2015年5月19日火曜日

遺伝病と線維筋痛症について

線維筋痛症のウィキペディアを大幅な改稿を終えて、まだ、ご指摘を受けながら追記と修正を加えています。それでも、もう峠は越えたと思うので、そろそろ闘病記的に書いているものを仕上げないといけないはずなのですが、うまく集中できません。

もともと遺伝病を調べている立場としては、成人医療よりも小児医療、生殖医療よりの技術開発と普及を望む立場でした。しかし、線維筋痛症の平均的な発症年齢は43.8歳であり、こちらは完全に成人医療です。しかし、痛みという見えない障害であるために、医療制度の外に置かれている傾向が非常に強い疾患です。痛みのみなら普段の私は筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の重度に近いので、FMのステージⅠ程度の重症度しかありませんが、体を動かすとどんどんひどくなるため、過去の一時期にはステージⅣぐらいの痛みで寝れない日々を過ごしていました。また易疲労性もあります。その立場からは、やはり線維筋痛症の患者とすごく近い・・・というか、ドライアイや羞明、顎関節症といった副症状を含めると、もしかしたら、二次性の線維筋痛症なのかもしれません。

基礎疾患としては空腹時発作があるので、先天代謝異常の稀な例と思っていますが。

想像以上に、線維筋痛症に入れ込んでいるので、遺伝病の立場からものを言うのが難しくなりました。患者会というのは、利益団体的な傾向が強いと思うのですが、過去に会員にならせてもらっていた米国のPeriodic Paralysis Association(PPA)は相当にオープンであったと言わざるを得ません。やはり日本の患者会は閉鎖的で、ほとんどの活動は内部の人間のためのもの、情報はあまりただで外に出さないという傾向があるように思います。それが日本の普通の患者会の姿であって、線維筋痛症の患者会だけに限らないとはもちろん思っているのですが・・・。

小児医療、また新しく生まれてくる命を中心に据えた文章を、線維筋痛症という成人発症の難病との関連では書きにくいということなのですが、更にもう一つ難しくするのは、線維筋痛症には緩い遺伝性しかないということです。あまり遺伝の影響はなくて、2型糖尿病とかアレルギー性鼻炎の程度です。線維筋痛症と診断された患者の多くは、線維筋痛症自体の遺伝性に関心はなくて、関心を持っている場合というのは、他の遺伝性とみられる疾患と合併したり、子が何らかの患児である場合が多いです。

このような次第で、線維筋痛症を応援、また自分の症状がどの程度近いのか調べながら、遺伝病について作業をするのは、モチベーション的に非常にやりにくい状況となってしまいました。

ウィキペディアの中立の大方針のように、バランスをとってやっていけると精神的にはやりやすいのですが、ここまで制度の外に置かれてしまうと、線維筋痛症に関わりながら、政治的に中立を保つということも難しいのかもしれません。