本節は執筆中の闘病記UNdiagnosedの中から移動したもので、ほぼ研究者のみを想定した節である。
S大学小児科のY教授の診察を受けた際に、私が持ち込んだ3回分のアミノ酸分画の結果シートについても指摘いただいていた。先述の2002年の他に、2010年と2011年にそれぞれ測定したものを示す*。教授から、アミノ酸分画が基準値を外れるのはよくあることなので、複数回の測定の中で系統的に出る基準値外れだけが病因性と言える、この3回分の中には、系統的な基準値外れはない、という指摘だった。
もう一度系統的に外れた項目がないかどうかを確認したところ、アスパラギン酸とグルタミン酸が該当していた。
2002 アスパラギン酸5.2(<3.3) グルタミン酸103.8(22.8~45.4)
2010 アスパラギン酸2.6(<2.4) グルタミン酸68.7(12.6~62.5)
2011 アスパラギン酸8.7(<2.4) グルタミン酸92.3(12.6~62.5)
これに着目してもう一度エクソームシーケンシングの結果を検討したところ、グルタミン酸受容体であるGRM8の変異が浮かび上がってきた。しかし、GRM8によるタンパクは中枢神経系で働くのに対し、グルタミン酸は基本的には血液脳関門を透過しないとのこと。しかし詳しい学術論文をあさると、GRM8の受容体で取り込み阻害が起こった結果、細胞外のグルタミン酸濃度が上昇した場合、中枢神経系でのグルタミン酸濃度を一定に維持するために、その上昇分は血液脳関門による能動輸送を経て循環系へと流れ込むということはありうるのではないだろうか? ただ、そうなるとアミノ酸分画によるグルタミン酸の上昇はあくまで中枢神経系のみに関係していて、筋肉痛と易疲労性、タンデムマス検査陽性とは関係がないように思える。
グルタミン酸の上昇の二次的影響としてアスパラギン酸がこれほど上昇することがありうるのか、それともアスパラギン酸の上昇は別の原因と思われるかが、鍵のような気がする。
現在他にも該当する変異がないか作業中です。ART5という遺伝子の変異も気になります。
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