示した図は、U.S. Department of Energy Human Genome Project†(米国エネルギー省のヒトゲノムプロジェクト)によりパブリックドメインとして提供されている英語版†が分かりやすかったために、日本語化すべく再構成したものである。この図はダウン症候群の症候群としての各疾患の内訳をとらえる上でおそらく役に立つと思われる。図中で、ダウン症候群そのものが「クリティカル領域」という付記されて含まれているが、これはダウン症候群クリティカル領域1(DSCR1)と呼ばれる遺伝子†のことを意味していると思われ、ダウン症候群でがんが抑制されている原因と考えられている。しかし、その他の疾患としては、QT延長、アルツハイマー病、白血病の遺伝子が21番染色体に載っていることで、これらの症状がダウン症候群の患児で進行してしまうという状態になってしまっている。
図中左上に記されているAPPは家族性アルツハイマー病(FAD)に関係していると知られる遺伝子で、FADではAPPの病的変異が優性遺伝する。トリソミーでは、単純にタンパク質を作り過ぎて制御が行き届かなるような状態ではないかと思われる。片親性ダイソミー§という、ゲノム刷り込みの影響で、染色体構成は正常なのに疾患を引き起こす疾患も存在するので、メチル化といった複雑な制御がうまくいかずに、症状を引き起こすのかもしれない。詳しいことはまだよく分からないので、現時点では大きくとらないでいただきたいが、症状とご両親の遺伝情報から各染色体のメチル化の影響を調べて、最も症状を緩和しそうな1本に目をつけて、その染色体を壊せたなら症状は改善するであろうと思われる。
おそらくは、重症度の低い優先遺伝的な発症パターンを多くの遺伝子で起こし、同時発症するために、1遺伝子当たりの重症度は低くとも、全体としては相当に重症度が高いと言えると思う。私の場合、2つの遺伝病の軽度のタイプの同時罹患を疑っているが、ダウン症候群の場合には遺伝病の軽度のタイプに10以上罹患しているのと似た状態ということになる。知能に影響してしまうので今までご本人たちの言葉として聞くのは難しかったと思われるが、健常者で言うとフルマラソンを走り切るといった激しい運動の後の朦朧とした意識障害が永遠に続いているのに近い状態と表現できると思われ、一見愛らしい外見により我々はそこまで認識することが難しいが、これは内的、精神的には大きな苦しみに耐え続けている状態と思われる。
私の方がはるかに軽度であったが同じ患児であった立場から言うと、このようにアルツハイマー病に近い状態で
は、ピアノやダンスといったお稽古事であまり厳しくない方がよいのではないだろうか。強制されてやっている場合もあれば、本人がご両親を大事に思ってその意向に報いようとして心臓といった臓器の具合が悪いまま無理をするということも頻繁に起こっていると思われる。
患児というのは総じて、自分の気持ちを言葉で表現することが難しいと考えられるため、それを補うためのスキルの方がもしかすると有益かもしれない。
"絵画" "ダウン症" 約 113,000 件
"英会話" "ダウン症" 約 106,000 件
"絵手紙" "ダウン症" 約 88,700 件
"書道" "ダウン症" 約 61,500 件
"手話" "ダウン症" 約 48,700 件
"マカトン" "ダウン症" 約 4,450 件
"ダンス" "ダウン症" 約 433,000 件
"体操" "ダウン症" 約 354,000 件
"ピアノ" "ダウン症" 約 215,000 件
個人的には絵手紙といった比較的短時間で1作品を完了できる、美的センスを独特さを問われる作業の方が得意な患児が多いように思われる。
21番染色体が増えた者同士で結婚すれば、基本的には4分の1の確率で48本の子供が生まれると推測できる。しかし、二重にダウン症候群を患うことになるかもしれないので胎児として重度の可能性がある。ダウン症候群の患者が結婚すると、生まれてくる子がダウン症候群である確率は67%かそれ以下と主張している記述があるが、元になっている文献を示していないので、こういった数値が出てくる根拠は専門の医師に尋ねないと分かりそうにない。(2014年11月17日追記、分かりました。とりあえずメモします。 "For a person with Down syndrome, the risk of transmitting the disease to the descendants is 1/3.")
ただ、二重にダウン症候群を患って重度になるのではなく、逆に健常者のように安定な存在になるのではないかという可能性も、情報が全くないため否定できない。実は、ダウン症候群の患者の二人が結婚して、生まれた子供が見た目健常者に見えるので、46本の健常者が生まれたのだと思い込んでいる子供が、実は48本の染色体を持っている可能性もゼロではないのではないかと思う。
48本に増えた新人類が登場するという考えは、調べた限り最初に口にしたのは、Wikipedia英語版の記述を信頼する限りは†、心理学者のカール・ユングのようである。「集合的無意識」や「夢分析」で特に有名で、フロイトの影響をうけて分析心理学を打ち立てたこの偉大な心理学者が、46+2本というアイデアをどういう文脈で述べたのかは調べてもよく分からなかった。しかし、Wikipedia英語版の"Forty Six & 2"†のページによると、この"Forty Six & 2"が意味するのは、「トゥール」(Tool)という米国のロックバンドの歌で、染色体の数が2本増えるという新しい人類の可能性を歌ったもののようだ。同ページの説明によると、カール・ユングが最初に思いつき、その後ドランヴァロ・メルキゼデク*(Drunvalo Melchizedek†)というニューエイジムーブメントの思想家が広めたアイデアであり、人体が46本の染色体に加えてもう2本を持つようになり、現在の混沌とした世界から逃れて、進化の階段を昇るという可能性について言及したものとのことである。
カール・ユングがどの文献でなんと言及したのか、具体的に調べるにはユングが母国語として数多くの著作を残したドイツ語で検索をかける必要があるかもしれない。ユングが当時ダウン症の染色体数が47本であることをどう考えていて、それが彼の新人類のアイデアにどう影響したのか、英語による検索では見つけることはできなかった。メルキゼデクの方は、聖書に登場するメルキゼデク*と同じ名前を使っているように、どちらかというと科学よりも宗教に近いのではないかと思われ、ユングがどう言及していたのかの方が重要と思われる。ジェローム・レジューンが21番染色体のトリソミーを発見したのが1959年、ユングが亡くなられたのが1961年なので、たった2年間だがユングが知っていて46+2本で新人類説を説いていた可能性は、わずかと考えられるが存在する。メルキゼデクの言及については原文が残っている。最小限を引用して意訳を付す。
("Leading Edge Interview with Drunvalo Melchizedek" Leading Edge Research, Interview Conducted on December 22, 1995, 2014年11月7日閲覧 より)
We are a disharmonic level of consciousness that is used as a steppingstone from the 42+2 level to the next level, 46+2.
私達は42+2本のレベルから次のレベルである46+2本へと駆け上がるための手段として用いることができる、意識の混沌としたレベルにいる。
We are dangerous to both ourselves and nature, but we are necessary, and this can be seen within the various geometries.
私達は私達自身と自然の両方にとって危険な存在だが、私達は必要とされている存在で、これは様々なジオメトリーの中に見ることができる。
(略)
You'll go through a mutation, both internally and externally, where your chromosomes change from 44+2 to 46+2.
染色体が44+2本から46+2本と変化した際には、我々は精神と姿形の両方で大きな変化を経験することになる。
You gain two more chromosomes.
2本も多くの染色体が得られるのだ。
The other 44 are exactly the same as humans now.
他の44本は現在の人類と全く同じなんだ。
These two additional chromosomes change everything.
これら2本増えた染色体が全てを変革するのだ。
"The other 44 are exactly the same as humans now."はもしかすると"The other 44+2"のタイポかもしれない。いずれにしろ、この思想家が、染色体が2本増えた新人類という考えを英語で何度も言及して世界的に広めたようだ。
21番染色体を2本というわけではないが、性染色体の異数性により48本の染色体を持つことになってしまった患児が、学術論文として報告されてきた。Wikipedia英語版の異数性のページに記載のタイプ†として、"Non-autosomal"として、性染色体が合計で4本になる疾患がそうである。全部で3疾患が記載されている。
21番染色体の場合に参考になりそうなのは、XXXXの場合に非常に軽症の患者がいることかもしれない。Y染色体が含まれると、重症度が上がってしまうようだ。
ダウン症候群の患者による出生率†としても、やはり女性の方が3割から5割で妊娠可能で、男性は男性不妊に近いが、必ず男性不妊というわけではなく‡、父親になった例が3件、母親になった例が26件報告され、ダウン症候群の子のおよそ半数がダウン症候群を患うと述べられている。
21番染色体+性染色体で48本となった患児も過去に存在しており、XXX+21のインドの患児‡、XYY+21のイギリスの患児‡、XYY+21のアメリカの患児‡、XXY+21のスイスの患児†の報告がある。全て独立に両方の染色体が増えてしまったとされているようである。少なくとも、2つの増えた染色体の間に強い関連性はあるとは、読んだ限りでは分からなかった。いずれにしても、これらの患児の症状は重度と思え、おそらくは早くに天に召されたようだ。自分よりも子が重症化する恐れがあるかどうかは、遺伝性疾患の患者が親になる場合には大きな課題であり、私の場合には後から気づくことばかりで反省すべき点が多かった。ダウン症候群の患者の間でも気になる方はいるはずで、何らかの文献が見つけられるとよいのだが。
これまでに48本となった患者の人数としては、十分に学術報告としてカウントできる数だが、なぜか21番染色体を2本の例は報告されていない。これは、見た目が健常者に近いなどの特別な理由で気が付かれていないのだろうか? それとも本当にいないのだろうか?
追記として、日本語でダウン症候群で48となる可能性について同じことを考えているウェブページがあった。
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