2014年9月6日土曜日

進化のランダム性、遺伝病のランダム性

 Wikipediaの進化のページを読んでいるうちに、もしかしたら希少疾患について突然変異が「ランダム」という表現は適切でないかもしれないと思い、ドーキンスの「盲目の時計職人」を初めて読んでみました。とても厚い本なので、今まで読むのを避けてきてしまったようです。その結果、進化に寄与する突然変異は多くの意味においてランダムでないようですが、疾患として表れて子孫をほとんど残さない場合には、進化よりもランダムであると考えていいように思います。たぶん、とても重要なことなので、一部を引用します。転載許可は後で考えます。
私は突然変異がランダムでない点として三つ挙げた。突然変異はX線などによって誘発される。突然変異率は遺伝子によって異なっている。そして前進突然変異率は復帰突然変異率と等しいとは限らない。いまは、これに突然変異がランダムでない第四の点を付け加えたことになる。突然変異は、既存の胚発生過程に変更を加えることしかできないという意味でランダムではない。(493頁) 
おそらく、疾患との関係からもう1点追加することができます。生殖可能年齢となるまでの成長過程で疾患を患うような突然変異は、次の世代に引き継がれないので自然界で認識することはほぼできない。しかし、ヒトの場合だけは希少疾患として認識される。

 この著書についての重要な点として、累積淘汰という、ランダム性が少なくて系統的な進化の考え方を説明していました。ヒトの疾患のことは、ほとんど登場しませんでした。思うに、この手の「淘汰」について書かれた著書で疾患を論じると、患者は淘汰されるべき対象と誤解され、著者・患者ともどもに不幸な関係になりかねないためかと思います。確かに何十年前ならそうかもしれないですが、遺伝医療時代の入り口に差し掛かっているので、人として生を受け戸籍によって人権を与えたからには、行政により遺伝子治療で患者を救うための努力がなされるべきと思います。その努力が実るにはまだ時間がかかるでしょうが。

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