2019年10月30日水曜日

男性不妊と劣性遺伝病の完全予防 - 22世紀の精子起源工学


 男性不妊と劣性遺伝病を完全制圧するため、また、現在NIPT(新型出生前診断)とPGD(着床前診断)で生じている中絶や卵子の選別という問題を解決するために、全ての選別過程を精子側で行う、精子起源工学を提案する。基礎技術の蓄積は順調に進んでいるが、全ての夫婦が同じ負担で平等に受けられるよう差別なく導入するには、22世紀に向けてのコンセンサスをなるべく早期に開始することが必要と考えられる。本節がその先駆けとならんことを願う。

 精子起源工学は、英語にするとSpermatozoa Genetic Engineering(SGE)と表すが、本著で日本語訳を問題にしているGeneticについて、遺伝ではなく起源とすることにした。[遺伝学用語の混乱:genetic、遺伝か起源か]で述べたように、geneticを親から子への遺伝的と訳しているのは誤訳または過剰修飾である。本来は親から子への遺伝という意味はなく、genusに由来する起源的という意味の方が適切である。ヒトが赤ちゃんとなって生まれてくる発生学的な意味で、根源という意味である。現在通用している訳で言うと精子遺伝工学ということになるが、精子起源工学とする方が名称が意味を表している。

 この技術はヒトの生まれによる疾患を予防するための、NIPTやPGDと同じ目的の技術であり、したがって貧富の差別なく全ての夫婦に利用する機会が与えられる必要がある。その実現には22世紀までかかると予測されるため、その頃になっても日本人は日本語を話しているであろうから、やはり英語と日本語の整合性をとりながら日本語で全ての情報が表現される必要がある。これから2050年と2100年の二回、SGEの実現まで半世紀の区切りが訪れることになるが、そのどちらかで、あるいはもっと早期に、英語から日本語へ導入されてしまった誤訳は修正すべきである。そう考えて、先取りする形で、精子起源工学と述べることにした。以降ではSGEと略称する。

Hayashi, Katsuhiko, et al. "Offspring from oocytes derived from in vitro primordial germ cell–like cells in mice." Science 338.6109 (2012): 971-975.
『体外培養にて得られた始原生殖細胞に由来する卵子からのマウス産出に成功』
引用元 143(2015年1月時点)

これが現在のところ、SGEに最も関係する最も優れた学術論文である。引用形式の都合上、先頭著者のみ示したが、実際には、京大の斎藤通紀(さいとうみちのり)さんのグループによる成果である。私はこの研究が山中伸弥によるiPS細胞の開発に匹敵するぐらい偉大な成果だと思う。以降でも著名人については敬称を略させていただいている。日本語のプレスリリースから引用する。

(『多能性幹細胞から機能的な卵子を作製することに成功』 京都大学, 2012年10月5日 より)

マウスで多能性幹細胞であるES細胞とiPS細胞から卵子を作製し、それらの卵子から子供を産み出すことに成功しました。これまで同研究グループは、雄のES細胞やiPS細胞から精子を作製することには成功していましたが、雌のES細胞やiPS細胞から機能的な卵子を作製した成功例は世界でもなく、その技術開発が望まれていました。

 研究グループは今回、雌のマウスのES細胞やiPS細胞を卵子や精子を作る元となる始原生殖細胞に試験管内で分化させて、それらをマウス胎仔の中から取り出した将来の卵巣になる体細胞と共に培養した後に、雌マウスの卵巣に移植することで未成熟卵子を得ました。それらの未成熟卵子を体外培養により受精可能な卵子にまで成熟させた後に、体外受精させることにより健常なマウスを得ました。これらのマウスは正常に成長し、子供を作る能力があることも分かりました。

 この技術の開発により、卵子が形成されていくメカニズムの解明に貢献するものと期待されます。また、この技術を応用することで不妊症の原因究明などにも役立つものと期待されます。
(略)
研究のポイント

マウスのES細胞、iPS細胞から卵子を作製
作製された卵子から体外受精により健常なマウスを得ることに成功
卵子形成メカニズムの解明、不妊症の原因究明などに貢献

解決しようとしている課題が皮膚といった体細胞から卵子や精子を作るという、誰でもわかるシンプルなものであるのに対し、その過程はかなり複雑であるため、この引用以降も細部の説明が続くが、私もよく理解できていない部分が多い。研究のポイントは控えめに慎重に述べられているが、実際には、これはヒトの生まれの仕組みを革新し、男性不妊だけでなく、全ての劣性遺伝病を制圧することが期待される、今後開発される巨大な技術体系の先駆けである。全ての劣性遺伝病とは、希少疾患の8割を占める単一遺伝子疾患のうち、特に重度となる約半分の成分で、実際に生きている人口が少ないため我々はあまり認識することがないが、新生児の死亡原因のおよそ8割である。今までご夫婦が泣いて諦めていた、生まれてすぐに失われる生命を、SGEの実現により一気に2割にまで抑制することができる。22世紀に向けてますます少子化に悩む日本にとって国家の生き残りをかけて開発すべき技術であり、この技術が実際に日本の研究者の成果によって実現に近づいていることも、素晴らしいことだ。それにも関わらず、現在の世間からの注目度はあまりにも低く、22世紀の日本民族の生き残りを決定する技術であるにも関わらず、まだまだ真剣に取り組んでいただいている研究者は少なく、予算的にも余りにも少なすぎる。iPS細胞は導入リスクの少ない成人の再生医療ばかりが注目されているが、生殖の生命倫理にまつわり、こういった技術開発が異端視されることになってしまうと、日本人としてあまりにもデメリットが大きく、生命倫理に外れないように研究予算の方向性を明確にした上で、より積極的に研究開発を促進すべきである。

 「生命倫理に外れないように」というのは、ES細胞であかちゃんの素である胚の転用と女性の肉体的負担が問題になって開発ペースが停滞した例があるため、生命倫理と開発ペースを両立させるには、研究予算の審査の段階で、生命倫理的な審査も兼ねることが理想的である。大変な予算が必要な研究であるだけに、倫理的に問題のある研究は予算審査の段階で排除できる点を本節では強調しておきたい。そのためには、審査員に国会の投票で専任された者を加える、議事録だけでなく録音や録画を公開するといった、よりオープンな形に向かっていった方がよい。技術的な部分はわかりにくい割に、倫理の問題は分かりやすいため、報道で取り上げられやすく**、 話が複雑化しないうちに、オープンにシンプルに、そして結果的に速く審査する体制が整えられると理想的であろう。

 技術的な課題として、皮膚といった体細胞から精子を作るというのは、体細胞というのはがんを生じることからも分かるように、変異が大量に導入されてしまっているため、実際問題としてリスクが高すぎてそのままでは使えない。ちゃんとした精子をつかって自然生殖しても、希少疾患が人口の7~10%を占めるほど多いのに、どんな変異がどれだけ蓄積されたか保証できない体細胞が使えるわけがない。がんが制圧されたならまだしも、成人の死因の第一位で、若年で発症する稀な種類のがんが現在も次々に発見され続けている。がんを発症するのは相当な程度まで変異が蓄積された後であり、単一遺伝子疾患の原因となるような変異はあなたの体にも現在も蓄積され続けていて、そのうち何割かは老化の形で表れているが、生殖細胞系列でないので子に伝わらないため我々は認識しないだけである。男児が生まれたときに臍帯血か皮膚繊維芽細胞を採取して冷凍しておくという方法が考えられるが、それらから精子を作る過程が複雑なので、将来の話である。当面の間、我々が男性から必要なのは、やはり、変異の程度を自然生殖と同じであると保証するために、コンドームなどから採取する精子そのものであり、理想を言えば、精巣生検による精原細胞である。そうしないと、生まれた子が遺伝性疾患を患ってしまった場合の原因として、SGEが追求されることになる。

 今までのNIPT、PGDでは「胚」または「胎児」そのものを「選別」、厳しい表現をすれば「間引き」していたことに、大いに倫理的な問題がある。ならば、圧倒的に数の多い「精子の側で選別」すればいいのではないか。その方が、女性の体に負担を強いて排卵誘発剤により採取する卵子の数も、PGDより遥かに少なくて済むのではないか。これがSGEで最も重要な点である。そして考えてみれば、精子の側でもしも劣性病的変異を完全になくすことができれば、両方の染色体に変異がなければ発症しない劣性遺伝病は生じない。さらには、Y染色体が世代を減る毎に欠失を受けて男性不妊の割合を年々増加させると予測されているのだから、精子の品質も向上させて、ちゃんとした生殖ができる状態の精子に作り変えることはできないだろうか。整理すると、次の3点のメリットとなる。

・精子の側で選別することにより、女性から得る卵子は選別しない。その分、排卵誘発剤の負担も少ない。
精子選別、卵子非選別
・精子の側で劣性病的変異を完全に排除することで、全ての劣性遺伝病を予防する。
劣性遺伝病の予防
・精子の品質低下による男性不妊を、精子の品質を向上させることで、根治する。
男性不妊の根治

しかしながら、最初に精子と受精するのは、女性から取り出した卵子ではなく、モデル卵子と呼ぶ理想の卵子である。つまり、モデル卵子とは、iPS細胞とゲノム編集の技術を使って、よりすぐってつくり上げる、日本人にとって理想の卵子のことである。これはつくり上げるのには極めて膨大な予算と時間がかかるが、一度作り上げてしまえば基本的に卵子とはES細胞なので、いくらでも量産することができる。つまり、量産すること自体を目的として、最初の段階では誰か一人の女性から排卵してもらう必要があるが、その一度の排卵さえ済めば、誰もその卵子の倫理について悩む必要はない。あくまでそれは、自分をES細胞として分化させて作る精子と、自分をES細胞として分化させて作る卵子と、いろんな膨大な手順を経てゲノム編集により劣性病的変異を排除した、量産目的のモデルである。もしもゲノム編集の技術が著しく発達すれば、母親か父親の体細胞から作成することが可能となるが、手順を少しでも減らして何百億円という予算を減じるためには、やはり一人の女性の卵子を元にするのがベストである。

 そしてその最初の一人の女性とは、言ってみれば、22世紀に生まれる日本人全ての祖母となる存在である。この構成だと、実は男性の方も祖父となってしまう。では、父は誰なのかというと、男性の精子とモデル卵子が受精して作られるES細胞である。量産可能なモデル卵子と、精子を元にしたES細胞もまた量産できるため、このES細胞の選別は既存のPGDの技術によりいくらでも可能である。つまり、最も品質がよい精子と受精したES細胞を選べば、Y染色体の欠失を受けていないベストな状態のY染色体を含むES細胞が得られる。そのES細胞を精子へと分化させ、女性から取り出した2~3個の卵子と受精させる。精子選別、ES細胞選別の2段階の選別がなされることにより、男性不妊は排除されるため、この受精がうまくいく確率は高いはずで、女性側に不妊の問題がない限り2個の受精卵を胚移植できるはずである。このうちどちらか一つが着床すれば、一人の子を授かり、2つともが着床すれば、同じ父系DNAを持つ二卵性双生児となる。つまり、一卵性双生児と自然受精の二卵性双生児の中間の、非常によく似た同性の二卵性双生児となる。

 この話から分かるように、最大の不利益は男性にあり、彼の遺伝情報は最終的には四分の一しか子にもたらされない。つまり、祖父である。しかしモデル卵子が全出生で共通であれば、生まれた赤ちゃんが成長して顔かたちがはっきりしてきたとき、祖父と父の中間の存在という程度に、子と男性は似ていると感じられるだろう。しかし、それでも、その子が自分の子孫であることは間違いないが、現在の意味での子と同程度の愛着を感じるかどうかは疑問である。やはり、祖父から孫への愛という程度にしか感じられない場合も多いであろう。この不利益を補填するため、子の性別決定権を、男性に付与するのだ。更には、モデル卵子として複数の候補があれば、モデル卵子の決定権も男性に付与することができる。男性の精子の側で選別を行った結果、男性の遺伝情報が減じられるのだから、性別決定権とモデル卵子決定権を、女性ではなく、男性に付与するのは、私はフェアだと考える。

 次なる問題は、果たしてモデル卵子となる女性は誰かということである。すぐに思い浮かぶのは、全ての日本人の祖母となるに最もふさわしい女性とは、皇族の中でもっとも国民の支持を受ける適齢期の女性である。現在の皇族の中で言えば、佳子内親王ということになるのだろうか。しかし、これは私の好みかもしれないので、実際に国民投票をしないと決まらないだろう。もう一つ問題があって、そういった国家の重要人物のDNAを研究のために公開してしまって、テロ対策として大丈夫なのかという心配が生じる。テログループにとってパーソナルゲノムウェポンの対象にしやすくなってしまうため、ずっと昔に冷凍保存された、皇族の女性の誰かの卵子という方が問題が少ないであろう。お世継ぎが常に問題となる皇族の女性に関しては、既に何度も採卵と冷凍保存が行われている可能性が高い。その中で、最も古い時代のもの、すでにご本人が天に召されてテロの対象とすることができないものを用いる方が賢明である。世代が古いほど、現在の世代の皇族の遺伝情報を推測することが難しくなる。理屈の上の話だが、イザナミの尊の遺伝情報を得ることができれば、もちろん、それがモデル卵子としてベストである。しかし、墓所さえも確かでないのに、いきあたりばったりで墓らしき場所から手当たり次第に骨へんを集めて環境サンプリングをやっても、ネアンデルタール人のようにうまく全ゲノムシーケンシングできるとは思えない。

Fu, Qiaomei, et al. "Genome sequence of a 45,000-year-old modern human from western Siberia." Nature 514.7523 (2014): 445-449.
『西シベリアの4万5000年前の現代人のゲノム』*

墓所の判明している中で最古の女性は、西暦600年付近の推古天皇なのではないかと思われる。ただ、得られるのは卵子ではなくあくまでゲノム配列なので、ゲノム編集で卵子として再構築するのに何百億円、何十年かかるかという話になる。まずは予備的研究を行ってプロジェクトの規模を明確にせずには行うことができないだろう。私の現在の予想としては、再構成に必要な予算規模を計算してみると非現実的という結果になるのではないかと思われるが、少なくともネアンデルタール人と同程度のゲノム解析までは比較的小規模で済むので、先行して行うべきではないだろうか。ネアンデルタール人のゲノム解析が成功してしまった今となっては、せいぜい1400年前ぐらいの骨など、技術的に難しくないように思われるため、もうどなたか専門の研究者が科研費の申請を検討していると思われる。しかし、世代を経るたびに起こった組み換えにより実質的には非常にわずかとなっているはずだが、現在の皇族が遺伝情報を受け継ぎ、利害関係を有する子孫と考えられるため、宮内庁に問い合わせた結果、稟議だけで何十年か待たされてしまう可能性もあって、まずは、推古天皇を日本女性の遺伝的モデルとしていただきたいという希望が国民の側にあることを、何らかの形で皇族および宮内庁にアピールする必要があるのではないかと思われる。

 他にもいくつかの考え方があって、単純に卵子を冷凍保存した女性のうち、国民の中で人気の高い女優や歌手といった非常に安直な考え方もできる。立候補する女性がいると、更に盛り上がるだろうが、収拾がつかない事態にもなりかねない。日本人以外の人種だが、正解一IQの高い個人である女性*の卵子がもしも得られるなら、たしかにそれも、科学的根拠として一理ある。より頭のよいあかちゃんが生まれた方がいいに決まっている。ただ、どう見ても日本人とは顔形が違うため、心情的に受け入れられないだろう。顔形が日本人に近いといえば、実は韓国人の方が古来の近親婚によって新生児の死亡の形で劣性病的変異が排除されて、わずかだが日本人よりも優秀な可能性が高いが、これは、実は天皇家にも近親婚が多かったため、同じ程度の優秀さなら、やはり天皇家の方がよいという話になるであろう。現在に至っても近親婚を続けていると劣性遺伝病を患ってしまって、しかも高度な現代医療により生殖年齢まで生き延びてしまう患者人口が増えているため、極めて苦しい人生を歩むことになるが、過去において近親婚をおこなって、それを現代に至って突然に停止した場合、近親婚の時代を生き残った子孫は集団遺伝学的に劣性病的変異が少なく優秀であることが知られている。一部の文学作品、アニメ作品*で科学的根拠なく描かれ、一般的に抱かれている先入観とは異なるため、いろいろな意味で物議をかもしそうな話であるため、こういった観点から深入りするのは、今のところ避けたい。

 モデル卵子を含んだSGEにより生まれた子では優性遺伝病についても改善されているはずで、更にSGEを介して2世代を経たなら、もっと優性遺伝病が抑制されると考えられる。世代を経て、モデル卵子に似るほど、理想の遺伝情報に近くなるためである。これにより男性不妊だけでなく女性の不妊も減る。ただし、世代を経る毎に、DNAの一様化が進み、単一の感染症のパンデミックに対して集団として弱くなるため、世代を経る前にモデル卵子のラインナップを拡張していく必要がある。一世代につき約25年、四半世紀かかると思われるため、一度それなりに高品質のモデル卵子が実現されたなら、それを改良、拡張していくのは時間的余裕もあるため容易であろうと予想される。

 実際問題として夫婦レベルでどこからとりかかるかという話になると、あかちゃんが生まれた時に臍帯血を保存しておいた方が有利である。そういった変異の導入された数の少ない、iPS細胞に近い幹細胞を利用した方が、あかちゃんが成人した将来、より安全に子を残せる可能性が高い。そもそも、NIPTやPGDなどという、間引きや選別を経ずとも、今生まれた新生児の臍帯血を冷凍保存しておけば、今から40年後にそろそろ仕事も安定したので、子を作ろうと思ったときに、臍帯血から、造血幹細胞、改良型iPS細胞、ES細胞を経て、高品質の卵子や精子へと分化できる技術が完成している可能性が非常に高く、そうすると不分離によるダウン症候群といった染色体異常症のリスクも最小化できると考えられる。ベストの健康状態の卵子へと分化させるのだから。盲腸といった全身麻酔手術を若年で受ける時に、卵巣生検、精巣生検で卵原細胞、精原細胞を採取した方が、造血幹細胞よりも更に変異は少ないはずであるが、機会の平等性を確保することができない。金額がばらつく可能性も高く、実施実績も臍帯血の方がはるかに上であるため、臍帯血移植にまつわり資金難*となっている公的臍帯血バンクを転用する方が、日本の医療全体にメリットが大きい。低コストで平等に半世紀を見込んだ臍帯血の冷凍保存をするための、公的臍帯血バンク、それも将来の個人利用を目的とした利用規定の策定が、急務であろうと思われる。ほぼ同じ目的のために、民間の臍帯血バンクも米国で普及し始めている*が、日本で今から資本主義的なやり方を採用するのでは、希少疾患を犠牲にしながらも作り上げた、日本の優れたコモンディジーズの国民皆保険医療と整合性がとれなくなってしまう。

 個人的な考えとしては、あくまで特別な経済階級の人たちに限られてしまうが、米国の臍帯血バンクを日本から利用しようとするのは、それなりに理にかなっていると思う。日本で個人利用の臍帯血バンクを新しく検討するよりも、米国のPGDを紹介している斡旋業者が既に存在するわけだから、彼らに英語書類を手伝ってもらいながら米国の臍帯血バンクと契約する方が、米国の圧倒的なスケールメリットを享受しながら、自由に利用できるはずなので優れた選択肢と思われる。米国のエクソームシーケンシングを受けた立場からすると、臍帯血バンクの方がシーケンシングよりもよほど金額はかかるが、日本語で米国の医療技術を体験して報告することにそれなりに価値があり、日本の公的臍帯血バンクの問題点を評価する意味から、完全に個人で受ける限りはそれほど悪いこととは思わない。少なくともコルベットやハーレーなどを買って米国車の排気で日本の皆が吸っている空気を汚染してぜんそくを促進するよりもよほどましである。コルベットやハーレーのサウンドにアメリカンを感じるよりも、米国のテイラーメイド志向の医療の質の高さに感動する方がよほどよいはずだ。日本の量産型ベルトコンベヤー方式の医療に慣れていると、払った金額の分は何を尋ねてもちゃんと考えて応じようと努力してくれることに、間違いなく感動するはずである。

 さらには、E-Cell**といった計算機的手段をもちいて、体細胞だけでなく、卵子や精子の挙動をシミュレーションする技術が、倫理に抵触しやすい実際の卵子の実験的研究に先行して安全性を確認するために開発されるべきであり、卵子や精子、受精卵といった、体細胞と比較して極めて種類の限られた単一の細胞を、さらにモデル卵子という限られたゲノム配列でシミュレーションすることになるため、一回だけ高精度なシミュレーションが行えれば、その計算結果の応用は無限大である。何十年かかる計算であろうとも、たとえ、グリッドコンピューティングといった日本中のパソコンの待機時間を利用しようとも、推古天皇の卵子の挙動はシミュレーションする価値があると思われる。なにしろ、すでに我々は日本史の江戸時代も鎌倉時代も含め1400年あまりも超えて、祖先のDNAをどうやって得て、どうやって我々の子孫の健康へと活用しようかという話をしているのだ。何十年かかろうが、実際の女性に胚移植するまえに、徹底的にシミュレーションで安全性を検証すべきではないだろうか。

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