2015年3月23日月曜日

ヒト検体の国際輸送 - 安直な虚偽記入のリスク

UNdiagnosed』にまとまりをもたせるために、節の分離作業を行っています。

 日本にいながら、米国に検体を送ってmtDNAを直接的に評価する方法についてここで述べるが、本来ならば日本国内で実施してより安価に受けられるようにすべきものである。米国にヒトの検体を送るのはもしも同じタイミングでテロ事件が起こったらトラブルだらけなので、この方法を決しておすすめするわけではない。特に、安価なEMSだと高価なFedExよりも手順が分かりにくかったため、私は物品名として「感染性のないヒトの検体」などと書かずに、"COLLECTION KIT"などと書いて送ってしまったが、今になってみると、それは大きな間違いだったと思う。物品名を正しく記入せずに、米国に検体を送ったのと同じタイミングで自分か家族親族が米国やグアム、サイパンなどに入国すれば、間が悪いとバイオハザードを狙った疑いで一時的に拘束されることが、おそらくありうる。

 少しバイオテロ関連の話を、DNA検査との関連を示しつつ、整理しておきたい。私が検体を送った時期には比較的平和だったが、2014年9月現在、米国はイスラム国と8月から交戦中で、どうもまだ戦火は拡大しているようだ。イスラム国が報復としてバイオテロを計画している噂があり、技術力が高いが費用も高い、日本のバイオ関連企業が、事情を知らずに、あるいは漠然と台所事情のために、ヨーロッパ人とユダヤ人だけに致死的で、アラブ人に無害なエスニックウェポンの開発の一部分を委託されていてもそれほど不思議ではない。イスラム国にとってアジア人は敵性人種とは考えにくいため、韓国や日本の企業に一部分を委託しやすいだろうと思われる。金額の問題であるとも言われており、2001年には50億円ないと開発できないと言われていたようだが、現在はもっと低いはずだ。エスニックウェポンほど悪質ではないが、オバマ大統領と直系の親族だけに有害なバイオ兵器は以前から潜在的な脅威と噂されているが、これほど選択的なものを開発するのは、エスニックウェポンよりも高価なはずなので、イスラム国が残して撤退した施設でエスニックウェポン開発の痕跡を発見したとか、そういう報道の方が先にくると思う。単にオバマ大統領の人種的由来や遺伝病傾向を記事にすべく髪の毛を集めている人たちを、誰かがテロ狙いだと勘違いしたのではないだろうか。それと同様に私達が米国に送る検体も、物品名が内容物と異なっていればテロ狙いだと勘違いされる可能性が、多分歴史上現在がもっとも高い。

 健常者なら、米国は日本よりも取り調べが人道的だし、バイオテロの疑いで一時的に拘束されるぐらいたいしたことはないと思う方もおられるだろうが、こういうことをするのはお年寄りや患者という身体的弱者の方が必要性が高いのも問題かもしれない。実際には検体の発送を知らずにグアム旅行に行った親族が拘束される可能性の方が高いような気がするが。米国では、取り調べの強硬さを、複数の国家機関の間で脅威の程度についての暗黙の合意を含めて調節するという、911以降改善を続けてきた優れた制度になっていて、テレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』で描かれているのは、おそらく半分は本当の話である。DHSによる取り調べの監視の元、外国人のバイオテロ容疑者だからFBIテロ対策局では脅威として扱いきれないと判断されると、CIA対テロ・センターの方に回されて、強硬に取り調べられことがありうるだろう。制度としてはNCTCでFBIとCIAのテロ対策が統合されたかのように見えるが、実際にはFBIとCIAの間で脅威の程度に応じて容疑者の身柄をやりとりしているはずである。決して人道的に良くはないが、そこはなるべく記録に残さず暗黙の合意でことを運ぶしか仕方ないのである。911を繰り返さないという誓いの元に、複数の国家機関の間で互いにできることをやって調整しようとするのは、それなりに素晴らしいことだ。

 テロに対してこれほど厳しい対策をしている国に検体を送る必要があったのは、私の場合には、後述する事情で日本で検査が受けられなかったというべきか、息切れと筋肉痛だらけの体で片道130キロの通院をしてそれなりの努力をしたつもりが、日本の検査のスペックが分からなかったからなのである。

 バイオテロについてここまで詳しく言及する必要はないのではないか、と考える御仁もおられるだろうが、[ミトコンドリアDNAの検査]の節の最後の図で全てお分かりいただけると思う。mtDNAを検査するというのは、実はエスニックウェポンを作るための基本技術なのだ。科学的な根本の部分で、mtDNA検査とエスニックウェポンは全く同じ技術を用いている。実に皮肉なことだが、患者や一般人のためにmtDNA検査が容易になったということ自体が、新しい生物学的テロの時代を象徴している。戦争から目を背けたい心理は分からないではないが、どんなに目を背けようとしても19万人という東日本大震災の12倍の規模の死亡者が出ている統計は変わることはない。こういったネガティブで多少、陰謀論的だが、将来重大な懸念となるであろう応用例についても、紹介すべきだと信じている。

 それでも実際のところは、私自身、ヒト検体を物品名を偽って米国に送るということによって将来起こる問題を全て予測できているとは思っていない。細かい可能性を含めば、後からいくらでも思いつく状況である。例えば、[個人向け遺伝子検査のガイドラインの乖離]で述べるように、米国というDNA検査の先進国から見ると、日本という後進国が効力の分かりにくいガイドラインにより非関税貿易障壁を作って、またいつかDNA検査でも米国を抜いてやるぞと妙にがんばっているように見えるため、新しく透明性の高いガイドラインを作らせるために、ヒト検体が物品名を偽って米国に送られているのを故意に事件にしかねない。また、[感染症と希少疾患の関係...]の節で、日本は先進国の中で例外的に予防接種後進国であると述べるが、日本で麻しんは一般的な感染症と思われているが、米国ではほぼ制圧済みの感染症であり、もしも液体のヒト検体から漏れだして空港職員や周辺の荷物の所有者に感染者が出れば、おそらく国際問題となる。そもそも、内容物をヒト検体であると正直に申告して、"NON-INFECTIOUS NON-HAZARDOUS"と感染症の病原体が含まれていないと主張しても、インフルエンザで最大10日の潜伏期*があるように、本当に病原体が含まれていないことを証明するのは実際問題として不可能である。

 採取から10日待って発症しないことを確認してから発送したとしても、発症しないことが感染していないことの証明にはならない。予防接種の効果により症状は極軽度に抑えられていても、感染しているということが可能性は低いがありうる。麻しんをほぼ制圧済みの予防接種先進国の米国から見ると、麻しんの予防接種を米国よりも頻繁に行なっている日本から、液体のヒト検体を物品名を偽って送りつけられるのは米国民を感染症のリスクに晒す犯罪行為に近い。というか、おそらく身柄が米国にあれば実際に逮捕される。米国民は2001年に起こった炭疽菌事件の恐怖をまだ覚えているのだから。FedExのクリニカル・パックはジップロックに似た袋で液体を漏れにくいようにすることが主な目的である。せめて採血ろ紙といった固体であれば、液体ほどの問題はないはずだが、現在はまだそういう方法がとられないところを見ると、採血ろ紙でDNAを安定的に抽出できる技術水準に達していないようである。もしもそうなれば問題は大幅に緩和されるので、将来に希望がないわけではない。ただ、現在の段階では液体のヒト検体を米国に物品名を偽って送付するのは、おそらく非常にリスクが大きい。

 なお、一応日本の名誉のために述べておくが、日本から米国へ麻しんが輸出されているが、米国から日本へはAIDSが輸入されていると考えられるため、日本だけが一方的に悪いわけではない。ただ、一度でも報道で明るみに出れば、利害関係が複雑であるため、国際問題として大きくなる要素がある。

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