2015年3月5日木曜日

冗長なDNA検査から効率的なシステムへ

UNdianosedにまとまりをもたせるために、節の分離作業を行っています。この節を、こちらに修正しながら転記します。

 一生に一度だけDNA検査を受ければ、その結果がクラウドで保存され、医師の前でスマホか何かを見せればいつでも遺伝情報を提示できる時代がいずれ訪れるだろう。具体的にイメージを掴んでいただくために、次に現在の段階で利用できるスマホアプリの画面を示しておく。23andMeなどの検査結果をスマホにインポートして、アルツハイマー病のどんな変異を自分を持っているか、医師に示すことができる。23andMeのDNAアレイによる検査結果として、この画面では3つのSNPsのみ表示されているようだ。いずれ次世代シーケンシングの巨大なデータをクラウドに載せて、スマホで必要な部分だけ表示するようにできれば、いくらでも詳しく表示できるようになるはずだ。

 こういったDNA検査結果の表示が、時間はかかると思うがいずれは、次の図に示すアップル社iPhoneの健康管理機能の青いフラスコで示された[検査結果]のコーナーや、2014年9月現在まだ具体的な画面は得られていないがGoogle Fitの画面に追加されていくものと思われる。

 補足しておくと、これら一連のスマホにまつわる健康管理機能の実装は、ハードウェアとしてBluetooth Smart規格に準拠した極めて低電力な健康器具が登場したことによる。ポラール社の心電計胸バンドを示しておく。ウェブページにはあまり説明がないが、あくまで腕ではなく腕に巻くバンドである。過去には心電計胸バンドとともに腕時計型表示器も必要だったが、Bluetooth Smartに対応することで直接スマホと接続できるようになった。

 スマホで遺伝情報を表示する動きは、消費者をターゲットにした個人向け遺伝子検査で進むものと思われるが、この動きとは別に医療提供者側に販売しようとしているサービスも存在する。Microsoft HealthVaultが現在残っている最大規模のものだが、かつてはGoogle Healthというものも存在した。これらは電子カルテを医療提供者と患者の間で必要に応じて共有できることを特徴としているが、電子カルテの共有方式としてCCR、CCDなど規格が対立している複雑さがあったり、病院への電子カルテシステムの普及が遅かったり、HL7規格への統一が思うように進まず価格が期待していたほど下降して来ないという問題があって、結局Google Healthのサービス終了およびGoogle Fitの登場によるGoogle社の方向性の転換という形で今日に至っている。

 歩みが遅いとは言え、まとまったDNA検査の結果をスマホで表示し、医療提供者との情報共有を促進するシステムへと世界は向かっているが、現在の日本ではまとまったDNA検査の結果を得ることさえできない。対象遺伝子毎に採血を行い、時代遅れのシーケンサを稼働させるのだ。これでは患者の金銭的侵襲的負担はとても重いし、結果が返ってくるのも時間がかかる。ひたすら冗長なやり方なのだ。

 およそ23000個もある一つ々々の遺伝子を調べていたのでは、たとえば抗がん剤など新しい薬を処方する前に薬剤反応を予測して副作用を抑えることなどできないので、よい医療を受けようとすればするほど、一生に一度だけまとまった形のDNA検査として、一気にエクソームシーケンシングや全ゲノムシーケンシングを行うしかない。その方が「揺りかごから墓場まで」というスパンで考えると、患者のおさいふとしても安上がりだし、保険組合にも負担が少ないのだ。

 日本はかつて長期的視野にたった日本的経営という手法で、欧米の企業経営に影響を与えた。さて、DNA検査についてはどうだろうか? 患者の一生に目を伏せて目の前のことしか考えていないのは、日本と欧米のどちらなのだろうか?

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